マンション管理士が有効に機能しない理由とは
マンション管理士の業務の具体的内容としては、管理組合から依頼を受けて行う「規約の制定・変更等に係る業務」「顧問業務」「大規模修繕工事の関係業務」等が多いようです。また、行政等の依頼により行われる「相談会等」での「相談業務」についても、約75%と高い割合を示しています。
気になる、マンション管理士としての業務に伴う過去1年間の年間売上高の調査では、マンション管理士を本業として活動を行っている者について、マンション管理士としての業務に伴う過去1年間の年間売上高は、400万円以上が18.8%、100万円以上400万円未満が30.4%、100万円未満が37.3%となっています。
マンション管理士として活動する事務所についての調査では、事務所の形態については、個人事務所が77.1%、会社組織、NPO法人、一般社団法人・一般財団法人といった組織で活動するマンション管理士は21.6%となっています。
事務所に所属するマンション管理士の人数は、1人(本人のみ)が75.8%、11人以上という回答が4.4%となっています。
個人事務所では所属するマンション管理士が1人(本人のみ)の事務所が86.3%となっている一方、会社組織、NPO法人、一般社団法人・一般財団法人が運営するマンション管理士事務所では所属するマンション管理士が11人以上の事務所が18.4%となっています。
個人事務所では事務所のマンション管理士以外の人数が0人の事務所が58.9%となっている一方、会社組織等が運営するマンション管理士事務所では事務所のマンション管理士以外の人数が11人以上の事務所が10.5%となっています。
前述のように、マンション管理士という資格は、マンション管理組合へのコンサルタント業務がメインですが、マンション管理組合へのコンサルタント業務はマンション管理士の資格を持っていなくてもその行為を行うことができます。マンション管理士の資格は名称独占の資格だからです。
理学療法士や介護福祉士、調理師なども名称独占資格でこれにあたります。
資格を持っている人だけが、その名称を名乗ることができる資格です。
まぎらわしい名称を用いることも禁止されています。
ところが建築士の資格はたとえどんなに技術が優れていても、免許がなければそれをしてはいけません。建築士三法第三条で(建築基準法第85条第1項又は第2項に規定する応急仮設建築物を除く。)を新築する場合においては、1級建築士でなければ、その設計又は工事監理をしてはならないという規定の下特定の事業を行う際に、法律で設置することが義務付けられている資格です。
これが業務独占資格で弁護士、医師などの資格も同様です。業務独占資格は、無資格で業務を行うと処罰があります。
同じ国家資格でも、名称独占資格は、無資格で名称を名乗ると処罰があり無資格で業務を行っても処罰はありません。ここが業務独占資格と名称独占資格との大きな違いとなっています。
マンション管理士の活用は、標準管理規約などで明記されていますが、四択の試験に合格して登録すればマンション管理士と名乗れるので実務経験や実績のないマンション管理士も多いのが実情です。
「行政から管理組合の理事会にマンション管理士が2名派遣されてきたが、経験もなく知識も浅い。あれで本当に管理会社と対峙できるのか。」
また、マンション管理のことで、本当に困って、ネットで色々調べたがわからいないことが多かったので、マンション管理士に相談した。「マンション管理士の回答はネットに書いてある内容と同じで、とても専門家のアドバイスとは言えないものだった」というご意見をよく耳にします。
実際に、名刺の肩書やインターネットのホームページは立派ですが、マンションに住んだことがない、またマンション管理組合の役員になったこともなくマンション管理組合の理事会に1回も出席したことがないというマンション管理士さんが多くいることも事実です。
管理組合が専門家としてマンション管理士を選定する場合には、
費用対効果:かけた費用に対して返ってくる効果はどのくらいあるのか
利益相反行為:管理組合の利益を図るべき立場にありながら、自己の利益を図る行為をしていないか
専門家としての能力:マンション管理会社、デベロッパー等で実務経験はあるのか
など管理組合運営に携わった経験や実績に基づいて判断することが肝要です。
利益相反行為をしないことの誓約書などの提出を義務付けることも必要です。
松本 洋
松本マンション管理士事務所 代表