(※写真はイメージです/PIXTA)

現在、マンション総数は660万戸以上に上り、そのうち約106万戸が旧耐震基準で建設されたもので、マンションの耐震化が進められています。その一方で、国はマンションの建替えを円滑に進めようとしていますが、実際のマンションの建替えは進んでいないのが現状です。その原因はマンション住民の高齢化と経済格差、立地条件が建替えだと指摘されていますが…。※本連載は、松本洋氏の著書『マンションの老いるショック!』(日本橋出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

旧耐震基準で建設されたマンションの耐震化の促進

■旧耐震基準から新耐震基準へ

 

現在、マンションストックの総数は660万戸以上あり、そのうちの約106万戸が旧耐震基準で建設されたもので、国土交通省では巨大地震に備えるために旧耐震基準で建設されたマンションの耐震化の促進を進めています。

 

旧耐震基準と新耐震基準とはどのくらい違うのでしょうか。

 

旧耐震基準は、1950~1981年に制定された耐震基準で震度5強程度の地震では建物は倒壊せず、建物が損傷した場合においても補修・修繕することで従来通りその建物に住み続けられる構造を想定しています。

 

一方、新耐震基準は、1981年に制定された耐震基準で震度6強から震度7程度の地震でも、建物は倒壊せず、建物が損傷した場合においても補修・修繕することで従来通りその建物に住み続けられる構造を想定しています。

 

しかしながら、旧耐震基準の建物から新耐震基準基準を満たす建物に改修する工事はまず、既に建っている建築物の構造強度を調べて、今後起こりうる地震に対する耐震性を計算によって導き出し、受ける建物被害の程度を数値的に把握する耐震診断を実施することが必要です。耐震診断は地震によって起こる建物の破壊や倒壊を未然に防ぐ為に、破壊や倒壊の可能性の有無や程度を把握する目的で行いますが、この耐震診断は費用が高額になります。

 

東京都の調査によると、耐震診断が必要な建物で耐震診断実施を検討していないマンションは58.9%、そのうち理事会で検討中が29.5%、今後実施する予定がないマンションは、82.9%になっています。

 

また、管理組合が有るマンションでは耐震診断の実施率が18.0%で、管理組合が無いマンションでは耐震診断の実施率が3.1%であることが報告されています。

 

耐震診断で新耐震基準を満たしていないことが判明すると、建物のどの部分をどのように補強すれば巨大地震が来ても建物の中にいる人が命を失うような倒壊を免れる事が出来るということを設計図に描く耐震設計を行います。

 

それが、終わると今度はその設計図に基づいて耐震補強工事を実施することになります。耐震設計、耐震補強工事にも高額な費用が掛かるので現実には実施をしていないマンションがほとんどです。

 

東京都の調査では、 耐震改修の実施状況を見ると、耐震改修を実施していないマンションは94.1%であることが報告されています。1995 年(平成7年)1月17日に発生した阪神淡路大震災では、新耐震基準の建物は、建物の大きな被害はほとんどなく、軽微、無被害が約70%でしたが旧耐震設計の建物では、大被害が約3割、中被害、少被害が約4割と建物への被害がでたものが、70%近くに上っています。

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マンションの老いるショック!データから学ぶ管理組合運営

マンションの老いるショック!データから学ぶ管理組合運営

松本 洋

日本橋出版

分譲マンションは現在、「区分所有者の老い」「建物設備の老い」という二つの老いの問題を抱えています。 本書では、国土交通省から公表されているデータや、筆者のマンション管理士としての経験から得た知識を基に「マンシ…

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