日銀が発表した資金循環統計によると、2020年12月末時点における個人(家計部門)が保有する現金である「タンス預金」は100兆円を突破しました。その一方で、日本人は「投資や寄付」には消極的とされています。今回は、投資と寄付の本質について解説します。※本連載は、大江英樹氏の著書『いつからでも始められる 一生お金で困らない人生の過ごしかた』(すばる舎)より一部を抜粋・再編集したものです。

「投資」とは「世の中に自分のお金を回すこと」

ことわざに「カネは天下の回りもの」というのがあります。これは、「お金は一ヵ所に留まるものではなく世の中を回っている。だから貧富は決して固定されたものではないので、今貧しいからといって悲観してはいけない、真面目に働いていればいつか自分のところにも回ってくるだろう」という意味で使われるようです。言わば現在貧しい人に対する励ましの意味があるのだと思います。

 

これは確かに一面の真実を表していると思いますが、一方で、「どうも最近の風潮を見ていると貧富の差は固定されてしまっていて、なかなか貧困から抜け出せない人も多いのではないか」と感じる人もいるでしょう。

 

筆者はこのことわざを一般的に理解されているのとは少し違う意味で解釈しています。

 

どうも前述のような解釈ではあまりにも受動的で、「まあ、そのうちに良いこともあるさ」的な気楽さ、もっと厳しい言葉で言えば半分「なぐさめの境地」のようなニュアンスを感じるのです。筆者はもう少しポジティブに解釈すべきだと思っています。

 

お金は世の中を回っていることは確かですが、それは自分と関係のないところで回っているのではなく、自分も社会の一員として回す一人になるべきだと筆者は思うのです。

 

例えば投資というのは儲けるためにやることだと思われがちです。それは確かにそのとおりなのですが、儲けるために必要なことは「世の中にお金を回すこと」なのです。というよりも世の中にお金を回すことでしか儲けることはできないのです。

 

もう少しわかりやすく言ってみましょう。投資とは、「今すぐに必要としないお金を持っている人」が、「そのお金」を「今、お金が必要なところ」へ回してあげるという行為です。具体的に言えば、企業が設備投資をしたり新規事業に乗り出したりするために資金が必要となった場合、銀行から借りるという方法もありますが、株式や社債を発行して個人に買ってもらうこともできます。

 

この場合の企業が「今、お金が必要なところ」であり、自分が「今すぐ必要としないお金」を持っていて、その企業に回してあげることが投資なのです。

 

回してもらった企業はそのお金を使って利益を出し、たくさんの従業員に給料やボーナスを払うことができるようになりますし、お金を出してくれた人に対しては配当や利息という形でお返しをします。

 

もし企業がたくさん儲けることができれば、その企業の株価は上がるでしょうから、投資した人=お金を回してあげた人は儲かることになります。すなわち、投資は自分が儲けるために行うのですが、世の中にお金を回すことで、結果的にその企業や取引先、そしてそこに勤める従業員に対してもお金が回っていくことになります。

 

だから投資は、自分が儲けるためであると同時に、世の中のためになることだと言っても良いのです。

 

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大江 英樹

すばる舎

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