40歳、個人事業主でライターの仕事をする独身女性の例
Bさんは、40歳でフリーランスの独身女性。短大を卒業後に出版社に就職しましたが、3年で結婚して退社。子供はおらず、その後離婚して30歳から再び働き始めました。現在はフリーランスのライターとして独立しながら数社から業務の委託を受けて個人事業主として仕事をしています。
ではBさんの現在、および今後の状況がどのようになるのかを見てみましょう。
Bさんの老後に向けた資金作りの考えかたは普通のサラリーマンとは全く別の方法が必要になってきます。それについて考えていきましょう。
老後対策…少ない公的年金を、他の制度でカバーする
①公的年金の少なさをカバーする
フリーランスですから、身分や収入の保障はありません。それにサラリーマンと比べると公的年金の額はかなり少なく、3分の1程度しかありません。したがって将来、公的年金だけで生活するというのはかなり難しいと言って良いでしょう。
このため、サラリーマンでは利用できない複数の制度を使って現役で働けるうちにできるだけ多くの老後資金を積み立てて置く必要があります。
その第一が、既に10年前、仕事を始めた時から積み立てているiDeCo(個人型確定拠出年金)です。
②iDeCoへの積立金を増額する
Bさんは、幸い意識も高く、制度の知識もあったようですので、フリーランスとして働き始めた10年前からiDeCoには加入していたようです。現在の残高が450万円ですから恐らくこれまでは月に3万円ぐらいを積み立てていたのでしょう。
フリーランスの場合、積立て限度額は最高月額6万8千円です。かつ、この掛金全額が所得控除となりますので、年収にもよりますが、掛金を目一杯掛けた場合、恐らく毎年の税金も20万円以上戻ってくることになるでしょう。したがって、現在行っているiDeCoへの積立金はできる限り増額をすべきだと思います。
③小規模企業共済を利用する
正規社員と異なり、退職金や企業年金はありませんから、その分、自らの蓄えを充実させることが重要であることは言うまでもありませんが、単に貯蓄や投資を増やすのではなく、できるかぎり税制優遇を得られる制度を活用すべきです。iDeCoはもちろんその一つですが、この他にもフリーランスであるが故に利用できる制度があります。
例えば、小規模企業共済の場合は、自営業であれば利用でき、iDeCoとは別に月額で最高7万円までは積み立てることが可能です。こちらも同じように掛金の全額が所得控除となりますので、収入が増えていっても生活を派手にせず、この制度も使ってしっかりと積み立てていきたいと思います。
④できるだけ長く働く
フリーランスの場合、前述したように収入も身分も不安定ではありますが、サラリーマンのように定年はありません。したがって、できるだけ長く働けるような方法を考えるべきです。加えて公的年金自体は少ないものの、繰下げを行うことで支給額は大きく増やすことができます。
65歳から受給を始めると月額6.5万円ぐらいですが、例えば70歳ぐらいまで働き、そこからの5年間をiDeCoを取り崩しながら生活し、75歳から公的年金を受取り始めると月額で約12万円ぐらいの金額が終身で受取れます。
これをベースにしてそれまでに蓄えた資金や小規模企業共済などを充当していけば、単身者であれば、生活していくことは十分可能だと思います。いずれにしてもフリーランスならではの、「できる限り長く働く」ということを活用すべきでしょう。
ポイントとなるのはできるだけ若いうちに働いて収入を増やし、公的年金の少ない分をiDeCoや小規模企業共済で賄うことだろうと思います。
加えて、長く働くことで年金支給時期を繰り下げれば、国民年金部分しかないとしても、それなりの生活水準を維持することは可能です。
大江 英樹
株式会社オフィス・リベルタス 代表取締役
1級ファイナンシャルプランニング技能士
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