独身・55歳男性「貯蓄100万円しかない」…将来の年金額「月15万円」の焦燥【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

老後資産の作り方に正解はなく、年齢や貯蓄額、年金額などによって異なります。そのため、資産内容を把握し、家計に応じて対策を練る必要があります。今回は、年金の受取見込額が月15万円で、独身の55歳男性会社員を例にあげ、老後対策について考えます。※本連載は、大江英樹氏の著書『いつからでも始められる 一生お金で困らない人生の過ごしかた』(すばる舎)より一部を抜粋・再編集したものです。

100万円の貯蓄を持つ、独身の55歳男性会社員の事例

今回は、定年をあと5年後に控えた独身サラリーマンEさんです。

 

 

最近は生涯未婚率が高くなってきていますので、定年前で独身の人も多いかと思います。独身の場合、一般的には医療や介護にかかる費用を少し多めに見ておく必要があるでしょう。なぜならパートナーがいない場合、必然的に介護はお金で賄う部分が多くなるからです。

 

Eさんの問題点は、現在の保有金融資産が少ないことでしょう。どんな事情だったのかはわかりませんが、現時点で金融資産が100万円しかないというのは心細いと言えます。加えて、退職一時金はあるものの、企業年金はありません。そのあたりのことを前提として老後資産形成を考えることが必要かと思います。

老後対策…なるべく長く働いて年金受給額を増やす

①70歳まで働く

現時点での金融資産が少なく、かつ企業年金もないことから、大原則はできる限り働き続けることだろうと思います。

 

サラリーマンですから65歳までは再雇用等で継続して働くことができますが、現時点では必ず70歳まで働けるという保証はありません。2020年に改正された「高年齢者雇用安定法」によって企業は70歳までの就業機会の確保を努力義務にするように定められてはいますし、今後70歳まで働ける企業は増えると思いますが、自分でも70歳までに働く準備はしておくべきでしょう。

 

この後述べますが、70歳までは年金を受取らず働いて得る収入だけで生活するようにすれば、そこから先の年金受給額にもゆとりが出てくるからです。

 

②公的年金は70歳から受取り始める

公的年金の受給開始は60〜70歳までの間で選ぶことができます(2022年4月からは60〜75歳まで選択枠が広がります)。

 

Eさんがもし70歳まで働いて、そこから公的年金を受取り始めるようにする場合、65歳からであれば受取れる月額の年金受給額15万円は21万円にまで増えます。単身世帯で21万円の年金受給であれば、比較的ゆったりとした生活を送ることができるでしょう。

 

総務省の労働力調査によれば、2017年の時点で70〜74歳で働いている人の割合は27.2%となっていますから、もしEさんが75歳まで現役で働いて、そこから公的年金を受取るとした場合、月額27万6千円となりますので、こうなると一人暮らしとしてはかなり余裕のある生活を送れます。要はできる限り働き続けるということがとても重要なのです。

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    株式会社オフィス・リベルタス 取締役 

    経済コラムニスト。専門分野はシニア層のライフプランニング、資産運用及び確定拠出年金、行動経済学等。大手証券会社を退職し、2012年にサラリーマンの老後支援を目的に(株)オフィス・リベルタスを設立。書籍やコラム執筆のかたわら、資産運用、年金、シニアライフプラン等のテーマで全国で年間140回を超える講演を行っている。CFP、1級ファイナンシャルプランニング技能士。主著に、『定年男子 定年女子』(共著、日経BP)、『経済とおかねの超基本1年生』(東洋経済新報社)、『定年前』(朝日新書)、『資産寿命』(朝日新書)、『定年前、しなくていい5つのこと「定年の常識」にダマされるな!』(光文社)など多数ある。

    著者紹介

    連載「お金で困らない人生」を送るための基礎知識

    いつからでも始められる 一生お金で困らない人生の過ごしかた

    いつからでも始められる 一生お金で困らない人生の過ごしかた

    大江 英樹

    すばる舎

    お金はあなたが幸せに暮らすための「道具」です。お金に振り回されないで生きるために、欲や恐怖、感情バイアスを取り除いて、まずはしっかりと公的年金と社会保険の真実を学ぶことで、今の生活や老後に必要な金額がわかります…

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