「商業的な成功を収めたアーティスト」が生きている癒着の世界

Appleのスティーブ・ジョブズが、文字のアートであるカリグラフィーをプロダクトに活かしていたことは有名だ。マーク・ザッカーバーグがCEOをつとめるFacebook本社オフィスはウォールアートで埋め尽くされている。こうしたシリコンバレーのイノベーターたちがアートをたしなんでいたことから、アートとビジネスの関係性はますます注目されているが、実際、アートとビジネスは、深いところで響き合っているという。ビジネスマンは現代アートとどう向き合っていけばいいのかを明らかにする。本連載は練馬区美術館の館長・秋元雄史著『アート思考』(プレジデント社)の一部を抜粋し、編集したものです。

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そもそもアートは誰が所有していたのか

所有者の変遷

 

それにしてもアートにおける交換価値の実体とは、何でしょうか? 貨幣のように国という権威が保証したものでも、価値が固定されたものでもありません。

 

値が上がるためには、それに値するということを信じるだけの根拠がなければならないでしょう。誰が何によって価値を保証するのかといった問題です。

 

アートの価値付けの変遷を歴史的に振り返ると少し根拠が見えてきます。そもそもアートは誰が所有したかということです。

 

アートは、かつて王侯貴族や為政者などの一部の支配層が所有していたという。(※画像はイメージです/PIXTA)
アートは、かつて王侯貴族や為政者などの一部の支配層が所有していたという。(※画像はイメージです/PIXTA)

 

アートは、かつて王侯貴族や為政者などの一部の支配層が所有して愛でていました。贅の限りを尽くしたものや万人を教化するために描いたものなど、美的で希少性の高いものです。つまり権力者が代わっても世の中の富を握る一部の者たちのものだったのです。あのダ・ヴィンチやミケランジェロも時の権力者のために作品を提供しました。

 

ところが、18世紀後半の産業革命以降、その様相は変わってきます。富を持つものが市民層にまで広がるとアートも同様に、それまでアートを所有してこなかった層にまで広がっていきます。時代が下り、資本主義社会が発展していくにつれ、下部層にまで広がっていったのです。例えば印象派の絵画は、当時台頭し始めた新興の資本家たちのために描かれています。プチブル(少ブルジョワジー)といわれる資本家と労働者の中間に位置するような人々が登場し始めた時代です。

 

トリックスター

 

社会全体の生産力が上がり、社会が豊かになり、多くの者が富を所有するに従い、アートも広がっていくのです。この現象をアートの民主化と考えることもできます。

 

フランス革命後、王宮であったルーブル宮を美術館にしたのも、王と貴族に独占されていた美術を市民に開放する“民主化の動き”によるものです。

 

多くの者がアートを所有し、アートの価値付けに参加するようになれば、アートはより開かれた価値として普遍的な存在になります。それが今日までの美術の歴史の流れです。かつて欧米を中心に所有されていた富は、グローバリゼーションにより世界に広がり、中近東、ロシア、南米、中国、東南アジア、インドと世界中に金持ちを生み、そういった人たちが、アートを所有し始めたのです。

東京藝術大学大学美術館 館長、教授 練馬区立美術館 館長

1955年東京生まれ。東京藝術大学美術学部絵画科卒業後、作家兼アートライターとして活動。

1991年に福武書店(現ベネッセコーポレーション)に入社、国吉康雄美術館の主任研究員を兼務しながら、のちに「ベネッセアートサイト直島」として知られるアートプロジェクトの主担当となる。

開館時の2004年より地中美術館館長/公益財団法人直島福武美術館財団常務理事に就任、ベネッセアートサイト直島・アーティスティックディレクターも兼務する。2006年に財団を退職。2007年、金沢21世紀美術館館長に就任。10年間務めたのち退職し、現職。

著者紹介

連載ビジネスエリートに欠かせない「現代アート」という教養

アート思考

アート思考

秋元 雄史

プレジデント社

世界の美術界においては、現代アートこそがメインストリームとなっている。グローバルに活躍するビジネスエリートに欠かせない教養と考えられている。 現代アートが提起する問題や描く世界観が、ビジネスエリートに求められ…

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