全国で行われたアートプロジェクトで町おこし
■日本の参加型アート
参加型アートは、何も海外だけで行われているわけではありません。日本の国内でも90年代から盛んになります。地方都市や過疎の農村部を舞台にしたアートプロジェクトで町おこしとして、あるいはコミュニティの再生の試みとして、日本の各地で行われています。
よく知られたものに越後妻有(新潟県)や瀬戸内(香川県)、別府市(大分県)などがあり、芸術祭の形を取ったり、プロジェクトの形を取ったりして、実施されています。
これらの成功により、雨後の筍のように日本中に同様のプロジェクトが誕生しました。
その特徴は過疎化した町や村を現代アートによって活性化させていくというもので、現在では、ある一定の成果や課題が出てきていて、次のフェーズに移りつつあるといったところです。先行した越後妻有や瀬戸内、別府などは、観光、地域ブランディングなどで成果を上げていますが、中でも瀬戸内は、アートの島となったいくつかで、人口増加や経済の活性化が見られ、アートとまちづくりが結びついた例として注目されています。
ただ、アートの趣旨をないがしろにして、観光コンテンツやまちづくりとしてのみ成果を評価するのは、注意すべき点です。あいちの例も含めて、アート自身の価値評価の強さを問われているようでもあります。
ここでは、例として私も初期に関わった直島のアートプロジェクトについて説明しましょう。島の南側の安藤忠雄設計による美術館開発と同時に、島の中央に存在する古い集落の中で古民家を使用したアートプロジェクトを継続して行ってきました。これが「瀬戸内国際芸術祭」へと続く、最初の一歩となるプロジェクトで「家プロジェクト」と呼ばれるものです。
1軒目の古民家「角屋」をアート作品として再生していくプロセスで、島民125人が参加。その結果、現代アーティストの宮島達男+建築家の山本忠司の作品として古民家「角屋」は再生します。一軒の家を直していくプロセスの中で、島の歴史を掘り起こし、コミュニティの再生を図るというものでした。こういった古民家再生とアート作品の設置を続けていくうちに直島は徐々に“現代アートの島”として国内外で認知されていきます。