まるで工場で大量生産される“芸術作品”…ウォーホルの挑戦 (※写真はイメージです/PIXTA)

Appleのスティーブ・ジョブズが、文字のアートであるカリグラフィーをプロダクトに活かしていたことは有名だ。マーク・ザッカーバーグがCEOをつとめるFacebook本社オフィスはウォールアートで埋め尽くされている。こうしたシリコンバレーのイノベーターたちがアートをたしなんでいたことから、アートとビジネスの関係性はますます注目されているが、実際、アートとビジネスは、深いところで響き合っているという。ビジネスマンは現代アートとどう向き合っていけばいいのかを明らかにする。本連載は練馬区美術館の館長・秋元雄史著『アート思考』(プレジデント社)の一部を抜粋し、編集したものです。

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メディアで消費される人々の欲望を作品化

現代アートの方向を決定づけた三人の巨匠、マルセル・デュシャン、ヨーゼフ・ボイス、アンディ・ウォーホルです。三人三様で、それぞれが特徴的です。現代アートを鑑賞する上ではスタンダードともいえるアーティストなので、今日のアートを大掴みするときに知っておくと便利です。

 

■アンディ・ウォーホル

 

3人目は、アンディ・ウォーホル(1928~87年 アメリカ)です。

 

もっとも現代的なアーティストのひとりだといえるでしょう。ただし、これは“現代”をどのように見るかで変わってくるでしょう。

 

現代社会を司る体制は、資本主義、消費社会、自由主義だということを否定する人はいないと思います。ベルリンの壁の崩壊、ソビエト連邦の解体など、社会主義体制が消えていく中で、資本主義が世界を覆したというのは間違いないことです。

 

勝者としての資本主義をものの見事に象徴する存在が消費文化です。人々は、消費生活の中で人生の喜びも悲しみも感じているのです。まるで空気のように消費活動は、私たちと共にあります。もしその「消費」というものに適当なポートレートがあるとしたら、どんな姿をしているでしょうか? きっとウォーホルの作品のようなものなのではないかと思うのです。

 

ウォーホルは、「すべてを知りたければ、表面だけを見ればいい。裏側にはなにもない」と、自身の作品について述べました。まさに奥行きのない、表面だけの鏡のような作品で、クルクルと目まぐるしく変わる消費社会の表層の姿を映し出しました。

 

20世紀は消費文明を謳歌したアメリカの時代ともいえますが、その本質は、そう楽観できるものでもありません。すべてが消費の対象になり、表面的なもので判断されていく、薄っぺらな時代です。それはものだけではありません。人も社会も消費の対象になるのです。人の死や不幸ですらも薄っぺらな情報へと変換されていきました。

 

マリリン・モンローやエルヴィス・プレスリーといったメディアを賑わすスターたちの肖像から自動車事故現場や電気椅子まで、悲愴な社会の表層として、それぞれのアイコンを抜き取っていきました。

 

普通に出回っているスチール写真を流用して、典型的な、定型化したイメージを作品にしました。そこにはこれまでのような、画家のオリジナルな描き方も、時間をかけた探求も創意工夫もなかったのです。ただ、大量製品をつくるように何枚も刷られたシルクスクリーン作品がありました。

東京藝術大学大学美術館 館長、教授 練馬区立美術館 館長

1955年東京生まれ。東京藝術大学美術学部絵画科卒業後、作家兼アートライターとして活動。

1991年に福武書店(現ベネッセコーポレーション)に入社、国吉康雄美術館の主任研究員を兼務しながら、のちに「ベネッセアートサイト直島」として知られるアートプロジェクトの主担当となる。

開館時の2004年より地中美術館館長/公益財団法人直島福武美術館財団常務理事に就任、ベネッセアートサイト直島・アーティスティックディレクターも兼務する。2006年に財団を退職。2007年、金沢21世紀美術館館長に就任。10年間務めたのち退職し、現職。

著者紹介

連載ビジネスエリートに欠かせない「現代アート」という教養

アート思考

アート思考

秋元 雄史

プレジデント社

世界の美術界においては、現代アートこそがメインストリームとなっている。グローバルに活躍するビジネスエリートに欠かせない教養と考えられている。 現代アートが提起する問題や描く世界観が、ビジネスエリートに求められ…

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