近未来の消費者洞察データを基軸にイノベーション支援を展開する、株式会社SEEDATA代表取締役社長の宮井弘之氏は、未来を予測せずに、目の前の現象に手持ちの資源や既存の手段だけでその都度、臨機応変に対処していく「エフェクチュエーション」という考え方を説いています。

「過去から未来を予測する」では対応できない?

厳しさを増すビジネスの現場に対しては、多くの武器を用意しておき、臨機応変に対応することが必要です。ここでお伝えするのは、数年後すらも予測できない不確実さの増すビジネス環境に対応するための武器です。

 

1978年にノーベル経済学賞を受賞したハーバート・サイモン氏の弟子である、サラス・サラスバシー氏は、成功した起業家のものの考え方を研究して、エフェクチュエーション(effectuation)という概念を提唱しました※1

※1 サラス・サラスバシー『エフェクチュエーション』(碩学舎)

 

エフェクチュエーションとは、成功した起業家に共通するもののとらえ方・考え方の一つです。簡単に言えば、未来を予測せずに、目の前の現象に手持ちの資源や既存の手段だけでその都度、臨機応変に対処していくことです。

 

これは、一般のビジネスマンの思考様式であるコーゼーション(causation)と比較することで、よりいっそう理解しやすくなります。

 

コーゼーションとは、未来は予測できるという前提で過去のデータからビジネス環境を予測し、それに対応する目標と計画を立てて、PDCAを回していくというものの考え方です。

 

例えば、ある商品が過去5年は年率で5%の成長をしているので、今後5年間も同様の成長ができると「予測」し、売上目標とその実行の計画を立てて、一度立てた計画は必ず守るという前提で予実管理を遂行していくイメージです。これは一般的な経営計画のやり方で一見おかしいようには見えません。

 

多くのビジネス理論はコーゼーションで組み立てられていますし、読者の皆さんにもなじみ深い考え方だと思います。

 

しかし、サラスバシー氏の研究によれば、成功している起業家は目標を立ててそれに向かって分析しながら積み上げていくようなものの考え方をしていません。

 

掘り下げると長くなりますが、コーゼーションの考え方はビジネス環境が安定している場合には有効ですが、新規事業や起業など新しいことへの挑戦時には不確実性が高いのでコーゼーションでは対応できないのです。

 

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宮井 弘之

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