経営学でも評価される「エフェクチュエーション」
近年では、VUCA(ブーカ)などといわれるように現実の世界は、Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ)に満ちています。このような世界では、未来を予測して、目標を定めて、それに向かって予実管理をしながら進めていくことは困難です。
しかし、将来の予測ができないとしても、私たちは将来に向かって人生を切り拓いていかねばなりません。そのときに役に立つのがエフェクチュエーションの考え方です。
先のことは分かりませんが、少なくとも今目の前に起きている現象だけはリアルです。その現象に対して、最も効果的な対応をすることで、自分の人生をより良い方向へと舵を切ることができます。そのとき、船の行き先は分かりません。もしかすると、当初の目的とはまったく別の方向に向かうことになるかもしれませんが、それもまた人生です。
エフェクチュエーションの考え方で大事なことは、下記の5つです。
■エフェクチュエーションの考え方
1.新しいモノや方法ではなく、徹底して手元にある手段の有効性を考えること
2.想定される将来の利益最大化を目指すのではなくて、致命的にならない損失がどこまでなのかを踏まえて投資に踏み切ること
3.あらかじめ決められた目標や計画にとらわれず、行動のなかで発生したことの価値を最大限活かそうとすること
4.出会った人のもっている人脈やスキルをうまく組み合わせてチームとしてやる事柄を決めること
5.重要な事柄は人任せにせず、最終的に自分の手でどうにかできるものだと意識しておくこと
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これらはエフェクチュエーションの5つの原則と呼ばれています。他社よりも早く社会に対して良い影響を与えてビジネスを拡大していく起業家の思考回路は、ほぼエフェクチュエーションの考え方だけで説明ができます。
それに対して予測ありきで計画を忠実に守ろうとするコーゼーションの考え方は、不確実な時代や環境にはあまり向いていません。一般に、MBAなどの経営学はコーゼーションにのっとった論理思考を教えますが、最近はMBAでもエフェクチュエーションを教えるところが増えてきたくらいです。
エフェクチュエーションの考え方の有効性は、統計学におけるマルコフ連鎖のアナロジー※3としても語ることができます。マルコフ連鎖とは、未来の事象の挙動が、過去のデータとは無関係に、現在のデータからのみ起きる系列を指します。簡単に言えば、3日前に起きたことよりも昨日起きたことを重要視しようというアルゴリズムです。
※3 同じたぐいのこと、または類似の点をもとにして他のことを推しはかること。
例えば、特に仕掛けのない普通のコインを6回投げて、表が5回連続で出たときに、次に出るのが表の場合と、裏の場合とでは、どちらの確率が高いでしょうか。実は、どちらも確率は2分の1で同じになります。次に表が出るか、裏が出るかはそれまでに出た面とは無関係だからです。
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