近未来の消費者洞察データを基軸にイノベーション支援を展開する、株式会社SEEDATA代表取締役社長の宮井弘之氏は、未来を予測せずに、目の前の現象に手持ちの資源や既存の手段だけでその都度、臨機応変に対処していく「エフェクチュエーション」という考え方を説いています。

成功する起業家は最初に立てた目標にこだわらない

一方、エフェクチュエーションを身につけたビジネスパーソンは、目標や計画は覆されるものという前提で、ただ目の前の事象に対して、できるだけ大きなエフェクト(効果)が発生するように、その都度、臨機応変に対処していきます。

 

例えばあなたが、ビジネスを学ぶための教育用ボードゲームを開発したとしましょう。コーゼーションの考え方では、このゲームをできるだけ多くの人に広めることを目的として、そのためにはどのような広告宣伝をすればよいか、面白さを理解してもらうためにはどのような説明が必要かなどと考えます。

 

ところが、そのように綿密に計画を立てたとしても、最初はなかなか広告宣伝効果が上がらず、想定したほどにユーザが広がらないといった事態がよく起こります。コーゼーションの考え方でいけば、広告宣伝効果が上がらなかったのはなぜかと、原因と理由を分析して、その原因をつぶしていきます。

 

つまり、起きた結果に対して対処はするものの、広告宣伝で多くの人に広めるという目的自体を変えることはありません。

 

一方、エフェクチュエーションの考え方では、起きた結果を素直に受け止めて「もしかすると、思ったほど面白いゲームではなかったのかもしれない」と考えます。そして場合によってはゲームの開発そのものを止めてリソースを別のプロジェクトに回します。

 

あるいは、止めてしまうにはもったいないくらいに中途半端に広まっているのだとしたら、そのゲームのどこがウケているのかを調査して、そのウケている要素だけを取り出して拡大できないかと考えます。当初の目標と計画にこだわることなく、起きた事象に対して、その事象のもつ価値や効果をさらに大きく拡大するにはどうすればよいかを考えます。

 

エフェクチュエーションは、成功する起業家に特徴的な思考様式です。なぜならば、起業には失敗がつきものですが、失敗したときにその失敗を素直に受け止めず、当初の目的にこだわり過ぎると、見込みのないプロジェクトにリソースを注ぎ込み続けるという悪循環にはまってしまうからです。

 

90年代に日本でもよく売れたビジネス書『ビジョナリー・カンパニー』は、長く続いている成功した企業は、基本理念だけを誠実に一貫させていて、事業そのものは多数の実験やスクラップアンドビルドで成り立っていることを綿密な調査で実証しました※2

※2 ジム・コリンズ『ビジョナリー・カンパニー 時代を超える生存の原則』日経BP社

 

例えばある会社は、創業時はネットオークションの会社でした。しかし、先行する競合に勝つことができず、試行錯誤を繰り返し、ようやくヒットしたのがモバイル端末向けゲームプラットフォームでした。

 

現在はゲームプラットフォームを運営することで知られている会社は、創業当初は交流型のSNSでした。日本では交流型よりもゲームのほうが多くの人を集められると分かったために、ゲーム機能をどんどん充実させていったのです。

 

このように、起業においては、当初の目論見がうまくいかないことはしょっちゅう起こります。

 

そして成功する起業家は、そのことをよく知っていて、世界は不確実で予測不可能だと理解しているために、当初の目的にこだわり過ぎることがないのです。

 

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バカにされたら「ありがとう」 あなたの限界をラクに超える最強の洞察思考

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宮井 弘之

幻冬舎MC

アイデアを生み出す秘訣は、「洞察力」にあり! 普通の人が考える“常識"をずらして、新しい視点、着想、アイデアを提示する思考法を、目的ごとに紹介。 本書では、世間一般でいわれている“常識"を、著者が一つひとつ覆し…

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