ESGの一つの切り口としての「健康経営」
ESG投資には多様な切り口があるが、その中でも東証と経済産業省が共同で毎年選定している銘柄には次のようなものがある。
・「なでしこ銘柄(女性活躍推進に優れた企業)」
・「健康経営銘柄(従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組む企業)」
・「DX銘柄(企業価値の向上につながるデジタルトランスフォーメーションを推進する企業)」
これらは、「S(社会)」と「G(企業統治)」の側面にフォーカスした銘柄として日本の個人投資家の間でも馴染みのある切り口と言えよう。ここでは、「ESG投資」における銘柄選別の一つの切り口として健康経営の視点を取り上げる。
「健康経営」とは、従業員等の健康保持・増進の取り組みが将来的に企業の収益性等を高める投資であるとの考えのもと、従業員等の健康管理を経営的な視点から考え、戦略的に実践することを指す。健康経営の推進は従業員の活力や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績や企業価値の向上につながると期待されている。
東証と経済産業省は共同で、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え戦略的に取り組む企業を「健康経営銘柄」として毎年選定しており、ESG関連銘柄のなかでも認知度は高いと言えよう。
「健康経営銘柄2021」として29業種で48社が選定(2021年3月4日公表)されている(図表7)。
なお、健康経営銘柄の選定にあたっては評価モデルが重視される(図表8)。
◆フレームワークのなかに感染症予防対策が含まれる
健康経営の実践度合いについて5つのフレームワーク(「①経営理念・方針」「②組織体制」「③制度・施策実行」「④評価・改善」「⑤法令遵守・リスクマネジメント」)から評価される。
感染症予防対策も一つの項目になっており、新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)への取組みの成果や企業経営への影響等を具体的指標で検証し社外へ発信・情報開示することも評価ポイントになってくるだろう。
中村 貴司
東海東京調査センター
投資戦略部 シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)
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