(※写真はイメージです/PIXTA)

親が高齢になって判断能力が衰えると、親族でも親の預金を自由に引き出すことができなくなり、後見人を選任して財産の管理を依頼する必要が出てきます。今回は、「信託」を活用してこのような問題を解決する財産管理法を、税理士が解説します。※本連載は、笹島修平氏の著書『信託を活用した新しい相続・贈与のすすめ 5訂版』(大蔵財務協会)より一部を抜粋・再編集したものです。

親が信託の利用に抵抗を示した場合は?

ご高齢のお父様に対して、「将来、万が一にも認知症が進んで財産管理が困難になると大変だから信託をしてください。」とお話して、お父様から一定の理解をしていただいたとしても、お父様から「今は大丈夫だから、将来そのような状況になったら信託しましょう。」と先延ばしになってしまうケースがあります。

 

しかし、認知症が進んでしまうと、信託契約もできなくなってしまうかもしれません。お父様からしたら「財産に関する日常の小さな事柄は面倒だし、任せたいけれど、重要な事柄については、自分はまだしっかりしているので、自分で判断したい。」ということが信託を躊躇する一番の理由かもしれません。

 

そのような場合には、財産を適任の受託者(例えば長男としましょう。)に信託して父に指図権を付与する方法が考えられます。

 

信託財産に関する重要な契約等(売買契約、重要な修繕の契約、建替えの契約等)や、信託財産に属する株式の議決権行使について、受託者は指図権者(父)の指図に従う旨を定め、更に受託者は当該指図権の行使には期間を定めることができるものとし、行使期間に指図権が行使されない場合には受託者が単独で判断して契約行為や議決権行使をできる旨を定めておきます。

 

そうすれば、お父様の意志能力に問題がない時は、お父様の指図に従って受託者(長男)が財産管理を行い、万が一にもお父様が意思能力をなくした場合には、受託者(長男)が単独で財産管理を行うことができるようになります。

「受益者代理人」のメリット

高齢の親が認知症になる前に信託をして、受託者が高齢の親に代わって財産を管理することができるようになっていた場合でも、親に後見人がつくと、後見人が受益者である親に代わって、親を含めた親族の意思と異なる権利行使することが考えられます。

 

このような時には、後見人がつく前に受益者代理人を選任しておき、受益者としての権限を制限しておくことが考えられます。ただし、受益者代理人が選任されている場合であっても制約できない受益者の権利もありますので万能というわけではないかもしれません。

 

笹島 修平

株式会社つむぎコンサルティング 代表取締役

 

 

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信託を活用した新しい相続・贈与のすすめ5訂版

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笹島 修平

大蔵財務協会

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