(※写真はイメージです/PIXTA)

親が高齢になって判断能力が衰えると、親族でも親の預金を自由に引き出すことができなくなり、後見人を選任して財産の管理を依頼する必要が出てきます。今回は、「信託」を活用してこのような問題を解決する財産管理法を、税理士が解説します。※本連載は、笹島修平氏の著書『信託を活用した新しい相続・贈与のすすめ 5訂版』(大蔵財務協会)より一部を抜粋・再編集したものです。

相続財産を減らすために、慌てて預金を引き出すと…

信託をすれば、財産の所有権はお父様(委託者)から受託者に移ります。財産の管理は受託者がするので、賃貸不動産であれば、賃貸契約から、修繕契約といった日常の契約も受託者が単独で行うことができます。

 

また、信託の目的に反しないのであれば受託者の意思で賃貸不動産を売却することも可能です(信託行為(信託契約等)に信託財産を受託者が単独で売却できない旨を定めれば、勝手に売却されてしまうことを防ぐことができます)。後見人制度を利用する場合のように、その都度、後見人の同意を得る必要もありませんし、裁判所に財産の報告をする義務もありません。

 

信託設定時の受益者をお父様にしておけば、信託する際に、実質的な経済価値は移転しないので、課税されることもありません。そして、信託契約の中で、相続が発生した場合に受益権を誰が取得するのかを定めることもできますので遺言書の代わりにもなります。

 

また、後見人を選任した場合には財産の贈与はできなくなりますが、信託を活用すれば受益者指定権者を指定することで、お父様の意思能力がなくなってしまったとしても、受益権をお父様から子供たちに移転していくことも可能になります。

 

例えば、お父様が倒れて、意識不明の状態になってしまったような場合、財産の移転は原則として不可能です。このような状況で、財産のことを気にするようなことはあまり褒められたことではないように思われますが、それでももし相続が発生したら、納税する義務を負うのは子供たちです。

 

気持ちはわかります。お父様が危篤の状況で、相続財産を減らそうとお父様の預金を引き出して孫達に贈与しようとするケースもあるようです

 

※相続又は遺贈により財産を取得した者に対して相続開始前3年内に贈与した財産は、相続財産に加えて相続税が計算されます(相法19)。

 

しかし、税務調査が入って、調査官が預金を引き出した記録を見れば、お父様の意思で行った贈与でないことは一目瞭然です。そうなると、贈与はなかったものとされ、引き出した預金はお父様の相続財産として相続税が課税されてしまいます。お孫さんは贈与された財産を返さなければなりません。場合によっては、お父様の預金を子供が相続したものとして相続税が課税され、加えて子供から孫へ財産が贈与されたものとして贈与税まで課税されることもあり得ます。

 

このようなケースにおいて、お父様の財産が信託されていて、受益者を指定することができる者が信託契約書において、長男等と指定されていれば、長男(受益者指定権者)が受託者に受益者を孫に変更する旨を伝えれば受益権は孫に移転しますので、実質的に財産の贈与をすることが可能となります。

 

このような状況になる前に、対策をしておくことが重要です。その対策の一つとして、信託はとても有効です。

 

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