(※写真はイメージです/PIXTA)

「遺言書」は、遺言者の意思でいつでも書き換えが可能です。そのため、遺言者の都合がいいように内容をあとから変更することもできます。そこで今回は、「信託」を活用してこれを防ぐ方法を税理士が解説します。※本連載は、笹島修平氏の著書『信託を活用した新しい相続・贈与のすすめ 5訂版』(大蔵財務協会)より一部を抜粋・再編集したものです。

遺言書の内容を確定させるために「信託」を活用する

Q. 先日、親族全員が集まって、皆の合意のもとで父に遺言書を書いてもらいました。ところで遺言書は、何度でも父一人で書き直しをすることができると聞きました。皆で合意した内容の遺言書が後日書き換えられてしまわないか不安です。遺言書が書き直されないように確定させることはできないでしょうか。

 

A. 遺言書は、たとえご親族の皆さんが合意したものだとしても、遺言者(お父様)の意思で、何回でも書き直すことができます。遺言の内容を確定するためにも、信託を活用するといいでしょう。

 

信託契約で受益権の相続の仕方を指定し、信託契約の中でその内容の変更が親族全員の合意がないとできないように定めておけば、実質的に遺言内容を遺言者が単独で変更できないようにすることが可能です。

 

 

遺言書は、遺言者の意思でいつでも書き換えることができます。例えば、長男に全財産を相続させるという遺言書を書いたとしても、その後長男と仲違いしてしまった場合には、新しく遺言書を作って「全財産を長女に相続させる」と書けば、日付の新しい遺言書が有効となり、長男に相続させる遺言は無効になります。

 

相続人であるお子さん達から、事業承継のご相談を受けることも多いのですが、その場合、相続税も大きな問題なのですが、親の財産を誰が相続するのかがより大きな問題となってきます。遺言書を作成する際、兄弟の関係が良好でない等の理由から遺言書を書き直されてしまうことを不安に感じるお子さんも少なくありません。

 

遺言の内容は原則として、遺言者(お父様)の意思で作成するものですので、遺言者が自由に変えることができて当然です。しかし、なかには子供が親に無理やり自分に有利な内容の遺言書を書かせるようなこともあるかもしれません。

 

また、高齢になると正確な判断ができなくなってくることもありますので、遺言書の内容を変更できないようにしたいという希望も仕方ないのかもしれません。

 

ここで、信託を活用した対応策をご紹介しましょう。

 

財産を信託した場合、相続により誰が次に受益権を取得するのかを定めることができます。信託契約にその内容を記載しておくと、実質的には遺言と同様に財産の相続の仕方を指定することが可能です。そして、信託契約に定めた内容(相続により受益権を取得する内容)が変更されない限り、信託契約で定められたとおりに相続される(信託契約に定められた者が受益権を取得する)ことになるのです。

 

もしも信託契約を変更したい場合には、原則として、委託者と受託者及び受益者が合意して行わなければなりませんし、信託契約で別段の定めをしておけば、その定めに従って変更しなければなりません。

 

したがって、信託契約を変更する場合、相続人全員の同意を得て行う等と定めておけば、勝手に変更されることを防ぐことができます。

 

(注) 遺言に書かれた信託の内容を変更するには、原則として、信託契約の変更と同様に委託者・受託者・受益者の合意が必要です(別途信託の内容の変更について遺言に定められている場合には、その定めに従います)。
(注) 遺言に書かれた信託の内容を変更するには、原則として、信託契約の変更と同様に委託者・受託者・受益者の合意が必要です(別途信託の内容の変更について遺言に定められている場合には、その定めに従います)。

 

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信託を活用した新しい相続・贈与のすすめ5訂版

信託を活用した新しい相続・贈与のすすめ5訂版

笹島 修平

大蔵財務協会

信託は、従来型の相続や贈与による資産及び事業承継の限界を超えるものとして近年注目されてきている。 本書では、遺言書と信託契約の内容が抵触する場合や遺留分を侵害する信託の論点、信託の併合と分割の課税関係や再信託…

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