子ども時代の兄弟姉妹の関係性は、成人後も大きく変わらないものなのでしょうか。母親の遺産相続時にチャッカリした姉に出し抜かれ、悔しい思いをした妹は、遠くない将来起こるであろう父親の相続でも、同様の展開が待ち受けていそうな気配を感じ、戦慄します。どのような対策を立てたらいいのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。

父親の重要書類は、すでに姉が持ち去っており…

三井さんは最近、出かけた先のショッピングセンターで、姉の美容院のスタッフと偶然会ったのだそうです。その際、父親のことをねぎらう言葉とともに、姉が毎週のように父親の施設に通い詰めていることを聞かされ、驚きました。母親の相続のときのように、姉に画策されるのではないかと気が気ではありません。

 

その後、空き家となっている実家を調べたところ、父親の金庫にあるはずの通帳や印鑑、権利書等が持ち出され、代わりに古い書類がぎっしり詰め込まれていました。

 

「父の通帳類は姉が保管しているはずです。私が銀行口座やクレジットカードの状況を確認する方法はないのでしょうか?」

 

三井さんが姉をいちばん許せないと思うのは、チャッカリと「いいとこ取り」をして、その行為に三井さんがモヤモヤしているのを知っているにもかかわらず、「妹とはものすごく仲がいいの!」と周囲の人々に吹聴しているところだそうです。

 

「子どものころから私は姉に出し抜かれてばかりで、いつも悔しい思いをしていました。ですが、私がどんなに泣かされても、理不尽な目に遭っても、両親は姉を軽くたしなめるだけで、まともに叱らないんです」

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

先の人生は長い、しっかり自己主張して権利の確保を

筆者からは、すぐにでも今後の父親のサポート体制や財産内容を姉妹で確認し、共有しておくことをお勧めしました。生前ですので、本人か本人の委任状により、取引の確認をしておくようにします。

 

さらに、将来もめないために母親のときの遺産分割も含めた公平な遺産分割案を作り、父親に公正証書遺言を作ってもらうことが望ましいといえます。

 

この対策がうまく進まない場合は、財産管理のために父親へ後見人を立てる選択肢もあるとアドバイスしました。

 

姉妹として助け合えればいちばんですが、理想通りに運ぶとは限りません。だれだって自分の兄弟姉妹とは争いたくないとは思いますが、不満や不信感を抱えたまま何十年も付き合い続けるのは無理があります。やはり、自分が納得できるところで決断するべきだといえます。三井さんの人生はまだまだ長いのですから、賢く対処して自分を守ることが大切です。

 

※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

 

曽根 惠子

株式会社夢相続代表取締役

公認不動産コンサルティングマスター

相続対策専門士

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

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本記事は、株式会社夢相続が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

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