ある日突然、老親が緊急搬送で入院という事態が起こります。介護は毎日のことなので、使命感だけでは長続きはしません。10年以上、仕事をしながら父母の遠距離介護を続けてきた在宅介護のエキスパートは、「介護する人が幸せでなければ、介護される人も幸せにはならない」と訴えます。入院や介護に備え、知っておきたい制度やお金の話から、役立つ情報、具体的なケア方法までを明らかにします。本連載は渋澤和世著『親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…』(プレジデント社)から抜粋し、再編集したものです。

施設を出なければならない時はどんな時?

親の看取りはどこを希望する?

 

施設の介護報酬に、利用者の看取りを行ったら支払われる「看取り介護加算」ができたことにより、特別養護老人ホームをはじめ、グループホーム、本来ならば在宅復帰を目指すはずの介護老人保健施設でも、看取りまで対応するという施設が増えてきました。

 

これに対応している施設は、入居の際、看取りの方針や施設の体制についての説明があり、本人と家族らは、医療行為及び延命等に関する事前確認書にその時点での希望を記載する流れになっています。その後、気が変わったときは申し出によりいつでも変更はできるようですが、そのときに決めるような軽い気持ちではなく、親の最期をどのように見送るのか、事前にきちんと考えておくと悔いが残りません。

 

親への治療方針により施設を退所になる?

 

お世話になった施設の職員とともに親を見送りたいと考えている家族も多いかもしれません。施設の案内には、「看取り対応・終の棲家として最適」などと書かれていても、状況によっては退所の打診を受けることがあります。

 

避けられないのは医療問題です。例えば胃瘻による経管栄養を受けていた方が、逆流による誤嚥性肺炎を起こした場合など。本来なら胃瘻に戻すのですが逆流による肺炎を繰り返すと医学的管理が必要なIVH(中心静脈栄養)に切り替えになることもあります。この状態では特別養護老人ホームに戻ることは難しく療養型医療施設などへの転院が必要となります。最後までこの施設にお世話になりたいと思っていても予期せぬことで退所になることもあるのです。

 

特別養護老人ホームは3か月を超えて入院すると退所となります。このような場合は退所手続きのときに、再度戻りたい場合は優先的に入居が可能かも確認しておきます。施設によっては、待機の順番を一番にしてくれてすぐに戻れるところもがあります。有料老人ホームの場合も、病状や治療方針によっては、その施設では対応できなくなることもありますので早めの確認が必要です。

 

有料老人ホームはダブルで費用が発生する

 

民間の有料老人ホームは、入院が長引いても退所を迫られるリスクは少ないのですが、入院療養費と施設の家賃と管理費の費用が二重に発生します。支払いの滞りがなければ問題ないのですが、滞納すると退去を迫られます。

 

これは一般的な住居と同じ感覚です。支払いができる余裕があるかなど、資産の状況と今後の医療の方針や生活も含めて検討が必要です。基本的に、有料老人ホームに入れる方は裕福な方が多いので、医療費負担割合も多いかもしれません。ざっくりですが、有料老人ホームで35万、医療費が20万としてもひと月50万円以上の出費になります。

 

他人への迷惑行為はイエローカード

 

他の入居者や職員に暴力をふるってケガさせる、壁に穴を開けるなど、行きすぎる行動は退去の原因となります。施設側も病気で怒りっぽいのか、精神科の薬で対処できるのかなど、その行動に至る原因と対処方法を色々検討して、その結果どうなのかと順番を踏んで進めていくので、いきなり退去を突きつけられることはありません。

 

男性が女性の部屋に頻繁に入る、他の人の所有物を持ってきてしまうなどの対処も、施設は本人や家族と相談しながら検討していきます。

 

渋澤 和世
在宅介護エキスパート協会 代表

 

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渋澤 和世

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