ある日突然、老親が緊急搬送で入院という事態が起こります。介護は毎日のことなので、使命感だけでは長続きはしません。10年以上、仕事をしながら父母の遠距離介護を続けてきた在宅介護のエキスパートは、「介護する人が幸せでなければ、介護される人も幸せにはならない」と訴えます。入院や介護に備え、知っておきたい制度やお金の話から、役立つ情報、具体的なケア方法までを明らかにします。本連載は渋澤和世著『親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…』(プレジデント社)から抜粋し、再編集したものです。

どの施設が親に合っているのかを検討する

医療ケアの必要が高い人が入居できる施設

 

インスリン注射や痰の吸引、経管栄養など医療のサポートの必要性が高い人は、療養病床の対象になります。ここはあくまでも医療機関なので、回復期までの寝たきり患者のケアが中心です。医療ケアと機能訓練が充実していますが、介護施設ではないのでレクリエーションなどはほとんどありません。また療養の必要がなくなると退院を求められることもあります。

 

介護老人保健施設(老健)は、在宅復帰を目的とする施設

 

老人保健施設は入院治療を終えて症状が安定している人が、在宅復帰を目指すための施設です。基本3か月ごとに在宅復帰ができるか検討をしますが、介護保険上の期限はないため、必ず退去させられるわけではありません。実際、老健に10年近く入居している方もいるのが実情です。とはいえ、在宅復帰率は高いので比較的回転が速く、入居の目途がつきやすいのも特徴です。

 

療養病床は療養の必要がなくなると退院を求められることもあるという。(※写真はイメージです/PIXTA)
療養病床は療養の必要がなくなると退院を求められることもあるという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

特別養護老人ホームが決まるまで複数の老健を転々とする、一度在宅に戻って1週間もしないうちに再入居などの方法で利用をしている人がいるのも現実です。理学療法士などの機能訓練は期待しているほど多くはありません。普段の暮らしを生活リハビリとしていることもありますので、毎日、器具を使って指導を受けられるなどの、過度の期待は禁物です。

 

特別養護老人ホーム(特養)は、より困った人が優先となる

 

以前に比べ入りやすくはなったものの特別養護老人ホームは待機者が多く、特に設備の良い施設は入居に数年かかるといわれます。ひとりで複数の施設に申し込みができるため、実際の利用希望者はその数よりも少なくなります。施設の入居待ち・待機者数を確認したい場合は、一例として、キーワード【かいごDB 川崎(ここに市区町村名) 特養 待機】で検索してみましょう。

 

このサイトは目安ですが、地域ごとに人気のある施設がわかります。また、他の介護施設の種類が選べるので便利です。特別養護老人ホームは要介護3以上で申し込みができますが、先着順で入居が決まるわけではありません。個人や家庭の環境に点数をつけ、より緊急度が高い人を選び出す優先入居制度があります。加点基準の一例は次のようなものがあり、在宅でのサービスを広げることで引き続き生活可能と考えられると加点がありません。

 

● 主介護者の介護力低下(病気や障害、認知症、死亡)
● 社会生活の困難(近所トラブル 徘徊で警察の世話が続く)
● 虐待 その他低所得世帯 居室が2階以上でエレベータがない  など

 

特別養護老人ホームは看護師の配置基準があり、主治医もいます。ですが、基本的に主治医は健康管理が中心で、積極的に治療はしません。もし病気が見つかったら、外の専門病院にかかるのが通常です。

 

即断即決は禁物! 有料老人ホームは親の症状や性格も基準となる

 

経営母体により個性が出るのが有料老人ホームです。食事、行事、居室の過ごしやすさなど、こだわりの工夫が施されています。食材や調理方法にこだわる、カラオケやヨガ教室などのイベントを毎日のように行うところもあれば、全く行事がないところもあります。居室の過ごし方も本人が望むからと部屋にずっと寝かせているところもあれば、無理にでも団らん室に連れてきては他人との関わりを持たせている施設もあります。

 

価値観をどこに置くかが選択の基準にもなります。医療面も看護師の24時間常駐、夜間の痰の吸引、リハビリ体制、介護に関わる職員体制なども様々です。現状のみでなく数年先も視野に入れて、ここなら自分も入りたいと子も思うような施設を選んでください。居住費は都市部ほど高額なので同じ系列でも東京よりも神奈川が安価な場合もあります。高額な施設なので、各家庭の資産、年金額も大切な基準となります。

 

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親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…

親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…

渋澤 和世

プレジデント社

高齢化が進む日本では現在、介護ストレスによる介護疲れが大きな問題だ。そこで本書では、仕事や育児との両立を前提に、「完璧な介護」ではなく「頑張りすぎない介護」を提案する。 正社員としてフルタイムで働きながら、10年…

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