要介護3認知症母を旅行に連れて行った
同居介護 母…要介護3
母が要介護3だった頃の悩みに弄便行為がある。これは、オムツ中の大便を手で触ること。触った手で他の衣類を触るし、時々、襖に便をこすり付けることもあった。舐めないことが不幸中の幸いだった。だが爪の中に入るのが不衛生なのでいつも短くしていた。
大便の介助でおしりを拭いているときに限り、わざわざ手で陰部を隠すように触りにくるのにも苛立った。手を胸にあてておいてと頼んでも当然、その通りにはしてくれない。介護者としては悩ましいが、人前で陰部をさらけ出し平然としている方が異常だ。隠しにくるのは当然なのだ。ただ軟便のときなどは本当につらかった。
この時期から、手洗いのほかに、丸石製薬のウェルピュア、健栄製薬の手ピカジェルなどゼリー状の殺菌剤を使用することにした。これらは病院や大型施設ホールなどに置いてあることが多い。病院に置いてある製品やメーカーは信頼できると思う。食事前後、帰宅時、感染症予防、うまく手が洗えないときなどにとても重宝する。
要介護3になった年の2012年5月。認知症の母を旅行に連れて行こうと思い立った。歩ける間に旅行をと思ったこと、家族とも少し距離をとりたい、自分も母を理由に海外旅行をしたかったからだ。外国船で税金やその他で10万くらいだった。徘徊しても所詮は船の中、そんな都合の良いことを考えていた。横浜を出発し、プサン、済州島、鹿児島のクルージングだ。船を選んだのは荷物が宅配便で送れること、乗船と下船が家から近いこと。
もちろん、船の中で過ごすことが多いがイベントが沢山ある。フォーマルディナーではドレスアップも楽しめる。観光は全てオプショナルツアーを申し込んだのは母の世話に労力を使いたかったからだ。船中はショッピングもできタイムセールでは母も自分の時計を選んでいた。980円くらいの安物だが選ぶというのは楽しい。
母とともに美容室も予約した。太平洋の水平線を見ながら親子でシャンプーカットとブロー。なんという贅沢な時間だろう。担当美容師が日本人なので母も安心していたようだ。鹿児島では指宿で砂風呂も経験した。要介護3で認知症でも自立歩行ができればシャワーも使えて清拭も問題はない。トイレも頻繁に誘導すれば大きな問題は起こらない。このときに行ってよかった。
認知症というのは都合の良い病気だ。私は父と兄を亡くしているが、母はあまりそのことを思い出さなくなった。特に兄を若くして亡くしたときの落胆はすさまじかった。そのつらい出来事を思い出さなくてすむのなら、その方が良いに決まっている。
この頃も、母の心の中にはいつも兄がいて、「まーちゃん」と声を出して呼んでいる。半面、ものすごく悪口に敏感だ。この頃、食欲旺盛な母は甘いデザートも大好きで体重は増加気味。「おばあちゃん、重いな、太っているよね」と家族で話していると「誰が太っているって」と怒っている。悪口で脳を活性化できるのかもしれないねと笑い話になった。