ある日突然、老親が緊急搬送で入院という事態が起こります。介護は毎日のことなので、使命感だけでは長続きはしません。10年以上、仕事をしながら父母の遠距離介護を続けてきた在宅介護のエキスパートは、「介護する人が幸せでなければ、介護される人も幸せにはならない」と訴えます。入院や介護に備え、知っておきたい制度やお金の話から、役立つ情報、具体的なケア方法までを明らかにします。本連載は渋澤和世著『親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…』(プレジデント社)から抜粋し、再編集したものです。

老母は介護して12年生きてくれている

同居介護 母…要介護5

 

家族だからこそ、日々一緒に暮らすだけで十分だ。腹立つもよし、喧嘩も良し、一緒に喜ぶのも良し。危害なければ何でも良し。親の介護と仕事を天秤にかけなくても良いし、どちらかを選ぶ必要もない。中間思考が一番、結果が良ければ良いと私は思っている。

 

介護のために仕事を辞めないと決めて、自分ではできないことをどうするのかを考えれば良い。認知症ケアに正しい答えはない。本人中心で介護者は怒ったりせず……は絶対に無理。認知症介護の本にはそう書いてあるが並大抵ではない。

 

母は自分が大好きでいつも自分が一番でないと気がすまなかった人。わがままは認知症だからではなく、本人の性格がそのまま出ているだけかもしれない。家族だから優しくできないこともあることを認める方が楽になる。

 

これからは在宅での介護を余儀なくされる時代になるという。(※画像はイメージです/PIXTA)
これからは在宅での介護を余儀なくされる時代になるという。(※画像はイメージです/PIXTA)

 

介護職員も人手不足。長期の入院も難しくなるのなら、これからは益々、在宅での介護を余儀なくされる時代になる。自分の介護に自信を持とう、母は12年も生きてくれている。

 

父は施設に入居はしないまま最期を迎えたけど、母は施設ということもある。もちろん、その逆も考えられる。子からすると父母は平等に介護したいが、できないことに悩むこともある。この平等というのは、ふたりとも在宅とか施設とか、施設といっても特養だとか有料だとか、必ずしも父母を同じようにと考えなくても良いと思うようになった。

 

それぞれ性格や個性があるから、家にいながら訪問介護を希望する人もいれば、他の人と一緒の方が楽しいという人もいる。植物も日陰を好むもの、日当たりを好むものとで育て方に差がある。これと同じで、それぞれの特性に合わせる介護が良い。この性格に応じた対応ができることが一番良いのだと思う。

 

介護中だからいつ会社を辞めても良い準備をしようと思った。介護はつらいことも多いけれど、転んでもタダでは起きないようにしておきたい。私は介護に生かせる資格に挑戦している。取得したからとすぐに会社を辞めるわけではないが、学びにより知識が増え、合格によって得られる自信と評価は確実に上がると思う。

 

在宅介護をしていると、付き合いが悪くなる。私も平日の夜は母の帰宅に間に合うように残業もコントロールしているし食事会も制限している。家にいる時間が増えるのならば、就寝までや土日を有効に使って、いずれ社会貢献できることにお金と時間を投資している。

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親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…

親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…

渋澤 和世

プレジデント社

高齢化が進む日本では現在、介護ストレスによる介護疲れが大きな問題だ。そこで本書では、仕事や育児との両立を前提に、「完璧な介護」ではなく「頑張りすぎない介護」を提案する。 正社員としてフルタイムで働きながら、10年…

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