高齢化、人口減少…昨今、マンションを取り囲む状況は極めて厳しいものになっています。大阪経済法科大学経済学部教授の米山秀隆氏の書籍『限界マンション 次に来る空き家問題』(日本経済新聞出版社)より一部を抜粋・編集し、タワーマンションが抱える問題点を解説していきます。

埼玉県川口市「エルザタワー」修繕の結果は…

埼玉県川口市のエルザタワー(1998年完成、55階建て、185メートル、650戸)は、2015年から2年の予定で大規模修繕を実施したが、工事費は1戸当たり200万円(総額12億円)と、一般のマンションの2倍程度かかったという。

 

工事は7階までは足場を組んで行うが、8階以上はゴンドラで行う。超高層マンションの大規模修繕の事例はまだ少ないため、その成り行きが注目されていた。

 

こうした問題に加え、超高層マンションでは、建物の上層階、中層階、下層階で購入する所得層が分化しているといわれ、修繕積立金が不足したときに、その引き上げについて円滑に区分所有者の合意形成がなされるのかという問題もある。

 

また、超高層マンションは値崩れしにくいという特性から、投資用として購入している層も多く、そうした場合、当初から管理には無関心という区分所有者が多くなる。2015年では、円安や日本の不動産市況の回復を受け、中国や香港、台湾など外国人投資家が物件を購入していた。

 

今後、超高層マンションの維持修繕が適正に行われていくのか、また、最終的に寿命が尽きた時に区分所有権を解消して、解体するという合意ができるのか、さらに、解体費用は捻出できるのかという問題は、通常のマンション以上に大きくなる懸念がある。

 

同じ超高層の建造物でも、オフィスビルの場合はオーナーが判断することにより、円滑に修繕や建て替えを行うことになるため、心配する必要はないが、超高層の分譲マンションとなると、終末期の道筋は非常に見えにくい。

 

仮に、建て替えを行う場合でも、容積率はすでに目いっぱい使っていると考えられるため、より多くの住戸を造り、その売却によって建て替え費用を賄うというスキームは使いにくい。おそらくは、その敷地に価値があって、周辺街区と一体化した再開発が行われる場合に、除却、再建築の可能性は出てくるが、人口減少が本格化する中、そのような大規模な開発に果たして需要がついてくるのかという疑問もある。

 

 

米山 秀隆

大阪経済法科大学経済学部教授

 

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限界マンション 次に来る空き家問題

限界マンション 次に来る空き家問題

米山 秀隆

日本経済新聞出版社

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