高齢化、人口減少…昨今、マンションを取り囲む状況は極めて厳しいものになっています。大阪経済法科大学経済学部教授の米山秀隆氏の書籍『限界マンション 次に来る空き家問題』(日本経済新聞出版社)より一部を抜粋・編集し、マンションの建て替えの問題点を解説していきます。

「マンション建て替え」の3つのスキーム

建て替えを行う場合には大きく分けて、①全員の同意による建て替え、②区分所有法の建て替え決議による建て替え、③都市開発法による法定建て替えの3つがある。阪神淡路大震災発生前までに行われた建て替えは、全員同意(①)と同潤会アパートに適用された第一種市街地再開発事業による法定建て替え(③)などであり、➁が使われることはなかった。

 

市街地再開発事業とは、老朽化した低層建築物が密集した地域について、敷地を共同利用して中高層化し、街路やオープンスペースも含めて再開発を行うものである。

 

②は阪神淡路大震災の被災マンションにおいて初めて使われたが、建て替え反対派から提訴されて裁判となり、その間、建て替えが一時中断するという事態が起こった。結局、反対派の敗訴で決着し、その後区分所有法の建て替え決議の要件が緩和された。

 

さらに①、②の方式の場合は、建て替え事業を区分所有者が「自主」で行うか、他者と「共同」で行うかによって2つに分けることができる。自主は、区分所有者自らが資金調達して建て替えを行うものであり、共同は、デベロッパーなど他の事業協力者とともに建て替えを行うというものである。

 

これまでの事例では、自主的に行ったのは極めてまれであり、ほとんどがデベロッパーなどとの共同方式によって行われている。その際使われるのが、等価交換方式と呼ばれる方式である。

デベロッパーと共同した建て替え

等価交換方式とは、区分所有者が土地持ち分を出資し、デベロッパーなど事業協力者が建設資金を出資して、完成建築物の占有面積をそれぞれの出資比率で取得し、事業協力者はその持ち分を分譲するというものである。

 

この方式では、通常、建て替え後には建て替え前を大きく上回る床面積を確保できるよう計画され、従前の区分所有者には建て替え前と同等以上の床面積を付与したうえ、余剰部分(保留床または余剰床)を分譲することで、建て替え費用とデベロッパーの利益が賄われる。

 

この方式では、従前の区分所有者に追加負担なしで建て替えることができ、デベロッパーも分譲利益を得られるというメリットがある。好条件のケースでは、還元率を100%以上にしても、デベロッパーは利益を確保することができた。

 

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限界マンション 次に来る空き家問題

限界マンション 次に来る空き家問題

米山 秀隆

日本経済新聞出版社

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