なぜ他国と比べて日本の空き家は多いのか
・特異な日本の住宅市場
多くの国では空き家率は経済状態によって上下に変動するが、日本の場合、戦後一貫して上口し続けてきた。
この背景には、戦後の住宅市場が使い捨て型の構造になったことがある。高度成長期の人口増加に伴う住宅不足に対応するため新築が大量供給されたが、その間に物件の質が落ち、住宅寿命が短くなった。
また、市街地が外延部にまで広げられ、立地条件の良くない住宅も多く供給された。つまり戦後は、市街地を無秩序に広げ、そこに再利用が難しい住宅が大量に建てられたが、一転して人口減少時代に入ると、条件の悪い住宅から引継ぎ手がなく、放置されるようになった。
都心部でも東京の木造住宅密集地域などでは、建てられた時点では適法でも現在の法令では違法状態で再建築できない土地の場合、空き家がそのまま放置されている。こうした状況は海外から見ると特異である。
たとえば、近年のイギリスの空き家率は3~4%、ドイツの空き家率は0~1%未満と、極めて低い水準で推移している。ヨーロッパでは、市街地とそれ以外の線引きが明確で、どこでも住宅を建てられるというわけではない。
建てられる区域の中で、長持ちする住宅を建てて長く使い継いでおり、購入するのは普通、中古住宅である。アメリカも同じ考え方であるが、空き家率が近年8~10%と比較的高い水準で推移しているのは、国土の広さが関係していると考えられる。
ヨーロッパやアメリカの住宅市場では、新築と中古を合わせた全住宅取引のうち、中古の割合が70~90%程度を占めるのに対し、日本ではその比率は10%台半ばという極めて低い状態になっている。
日本では、空き家が増加する現在でも年間90万戸ほどの住宅が新築されており、2018年度は、95万戸もの住宅が新築された。日本の住宅市場は、空き家が増加する一方、新築住宅が造られ続けるという状況に陥っている。
20年後も空き家率は低下しないここまで空き家が全国、東京都とも増加している現状についてみてきた。このままで推移すると、空き家率はどの程度まで上昇するのか。一定の条件の下で、全国と東京都の空き家率の試算を行ってみた。
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