老いていくマンションの現状
ここでは、マンションストック※の現状についてみておこう。かつてマンションは全国で毎年20万戸のペースで新規供給が行われることもあったが、現在は8万~10万戸程度にまで減った。分譲マンションのストックは全国で665.5万戸(令和元年末時点)に達する。
※中古や新築でも在庫で売りに出されているマンションのこと
マンションの居住人口は、1世帯当たりの平均人員2.33(2015年国税調査)をもとに算出すると1551万人に達する。665.5万戸のうち1981年6月以前に建設された旧耐震マンションは104万戸(全体の16%)、1971年4月以前に建築された旧・旧耐震のマンションが18万戸となっている。
ちなみに、旧耐震基準とは、1968年に発生した十勝沖地震の被害発生を踏まえ、1971年の改正により、鉄筋コンクリート造の帯筋の基準を強化したものである。中地震(震度5程度)に耐え得る基準となっているが、大地震(震度6強~7程度)へは対応していない。
新耐震基準とは、1978年の宮城県沖地震の被害発生を踏まえて1981年に策定されたもので、中地震に対して損傷しないことに加えて、大地震に対して倒壊しないことの確認を追加したものである。
都市部においては特にマンション住まいの人は多い。マンションが最初に登場したのは1950年代半ばで、これ以来、共同住宅を区分所有して持つという形式が普及していった。
しかし、今後マンションの老朽化は急速に進んでいき、築40年超のマンションは、2024年には140万戸(2014年の3.2倍)、2034年には277万戸に達する。この後についても増加の勢いは止まらない。
一方、東京都について見ると、2013年末のマンションストック165万戸のうち、旧耐震は36万戸(全体の22%)、旧・旧耐震の割合は7万戸(全体の4%)となっている。東京都では、旧耐震、旧・旧耐震の割合が全国よりやや高くなっている。旧耐震のマンションが多く分布しているのは、区部では城西・城南地区、市町村部では多摩ニュータウンなど大規模団地を抱える多摩市や、八王子市、町田市が多くなっている。旧・旧耐震については、町田市や東久留米市が高い比率となっている。
今後のストック老朽化については、築40年超のマンションは、2023年には12.6万戸(2013年の3.4倍)に達する。東京都では全国よりも老朽化のペースが速い。全国と同様、この後の増加の勢いも止まらない。
マンションは時間の経過とともに、建物の老朽化に加えて、区分所有者の高齢化も進んでいく。いわゆるマンションが直面する2つの老いである。国土交通省「分譲マンションの現状と課題」(2013年)によれば、マンションで住んでいる人が60歳以上のみの割合は、1970年以前の建築では、52%、1971~1980年の建築では48%に達する。また、国土交通省「マンション総合調査」によれば、1980年度には世帯主が60歳代の割合は8%にすぎなかったが、2013年度には50%に達している。
マンションの流動性が高く、住民の新陳代謝が進めば、高齢化の進展は食い止められるが、いったん購入したマンションは永住する場合が多く、区分所有者の高齢化が進展していくことは避けられない。
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