医療従事者「先が思いやられる」…ワクチン接種が進まない背景

医療従事者から優先的にワクチン接種が始まった。筆者もまた、福島県いわき市で働く医療従事者の一人として、接種の準備に関わっている。医療現場の現状に大きな注目が集まるなか、現場からの声を聞いた。

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最初からつまずいた「ワクチン接種円滑化システム」

新型コロナ流行の第4波が明らかになりつつあるなか、ワクチン接種が進められています。筆者が勤務するグループでも、医療従事者向けの新型コロナのワクチン接種が始まりました。2月初旬から準備が始まり、途中、もどかしい出来事を経ながらも、なんとかスタートしています。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

準備の最初の段階である「集合契約締結」の手続きから、スムーズには進みませんでした。ワクチン接種にあたっては、全国の市区町村と全国の医療機関等が集合契約の形式により委託契約を締結することになっており、各医療機関には所定の様式での委任状作成と提出が求められます。筆者の病院にも、福島県医師会から委任状を提出するよう通知がありました。

 

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委任状は、厚労省が開発した「ワクチン接種円滑化システム」(V-SYS)にて作成しなくてはいけません。しかしシステムが機能せず、提出締切りに間に合わないという事態が発生しました。

 

慌ててV-SYSサービスデスクや委任状の提出先である市医師会に問い合わせましたが、他の医療機関も同様であることがわかり、結局、システムが稼働し次第提出するということになりました。

 

締め切りが延長される旨の通知が市の医師会から届き、併せて集合契約に参加するかどうかを確認するための別様式の提出が求められ、二度手間となってしまいました。V-SYSには、正直あまり期待していませんでしたが、いっそう先が思いやられました。

県のワクチンチームと医療機関の情報共有も不十分

県内でのワクチンの振り分けも、スムーズには進んでいないように感じました。市内では、医療機関を対象に何度か説明会が開催されました。はじめのうちは県のワクチンチームが市内の接種体制も決めていくというような説明もありましたが、それぞれの地域の事情まで把握するのは困難であったため、意見や希望の取りまとめなどは市の医師会が担うことになるといったこともありました。

 

県のワクチンチームと医師会、保健所とでは、持っている情報に差があり、また、医療機関側の足並みも揃えなければならず、もどかしさを感じました。

 

説明会では、「ワクチンの入ってくる量や時期については、情報が少なく、はっきりとは伝えられません」と繰り返されました。そのなかで配分を決めるのは難しいと理解していても、現場としては納得できない場面もありました。

 

筆者もお手伝いしている市のPCRセンターが設置される施設では、PCRセンターの運営に加え、軽症の陽性者の入院も引き受けており、陽性者の入院数は市内2番目でした。コロナ対応を確実なものとしておくためには優先的に接種を行いたいと考えていましたが、最初の説明では、初期段階で配分されるリストには入っていませんでした。県のワクチンチームとの情報共有がうまくできていなかったのです。

 

担当者に状況を直接説明し、結果的には「状況がわかっておらず申し訳ございませんでした」と、初期段階で配分されることになりました。

ワクチンさえ入ればいつでも接種可能な体制

このようにドタバタしているなかで、筆者の病院でもできる限りの準備を進めました。ワクチンが入ってくるスケジュールがはっきりしない状況で、誰からどのような順番で打つか、といった検討もありましたが、基本的にはインフルエンザのワクチンを打つ流れを元にしました。注力したのは、スタッフのワクチンに対する理解度を上げることでした。

 

他の医療機関では、ワクチンの接種を希望しないスタッフも少なくないと聞きます。しかし筆者の病院では、ほぼすべてのスタッフが接種を希望しました。接種率を上げるため、スタッフ向けのパンフレットや動画で情報共有をし、不安のあるスタッフに対しては個別相談会を開催しました。

 

パンフレットはICT(感染対策チーム)が作成しました。チームの医師は様々な論文を読み込みながら、平易な言葉に噛み砕いて示してくれたことで、専門知識のないスタッフでも正しく理解できる内容となりました。専門的内容をこれ見よがしに難解に、医師が書きたいように記載するのではなく、どうすればスタッフに適切に伝わるかを考え作成されたことが効果を高めたように思います。

 

また筆者の病院では、院長が、スタッフ向けのウィークリーメッセージをYouTubeで配信しています。撮影から編集、アップロードまでのすべてを院長自身てが行います。「ハロー職員のみなさん! 本日は~」とさながらYouTuberのようで、気軽に見られる構成になっており多くのスタッフが楽しみに視聴しています。

 

コロナワクチンについても、ICTと共同し、ワクチンの特徴や副作用、効果、スケジュールなどについて説明する動画が作成され、院内スタッフに配信されました。

 

更には、ワクチンに対して不安を抱くスタッフ向けの個別相談会も実施しました。スタッフからは「妊娠中(妊活中)だが影響はあるか」「アレルギー体質だが大丈夫か」「今飲んでいる薬との相互作用は大丈夫か」といった相談があり、それに対して医師が一人一人丁寧に答えました。「医療スタッフだからわかっているだろう」などと軽視せず、丁寧に対応したところに、院内のICTの力量を感じました。

 

ワクチンが早く入ってきさえすれば、次々と接種を進められる準備はあります。筆者の病院には、2月10日にディープフリーザー(超低温冷凍庫)も納入されました。しかし、一度も活躍の機会なく今に至っています。

 

ワクチン納入の連絡を、今か今かと待ち続けている状況です。他の医療機関にも、コロナと丸腰で戦っている医療従事者がまだまだたくさんいます。そのほかにもワクチンを待ち望んでいる人がたくさんいます。早く前に進むことを願っています。

 

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杉山 宗志

ときわ会グループ

 

 

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ときわ会グループ 

静岡県伊豆出身。静岡県立韮山高等学校、東京大学工学部建築学科卒業、同大学院工学系研究科建築学専攻修士課程終了。東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラム修了。東京大学在学中は運動会剣道部に所属。現在は福島県いわき市を中心に医療、介護、教育を軸に事業展開する『ときわ会』にて勤務。

著者紹介

医療と社会の間に生じる諸問題をガバナンスという視点から研究し、その成果を社会に発信していく特定非営利活動法人「医療ガバナンス研究所」による学会。「官でない公」を体現する次世代の研究者の育成を目的とし、全国の医療従事者が会員として名を連ねている。

著者紹介

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