米国では「支持政党」がコロナの感染リスクを左右する衝撃事実

多くの米国人は自分の意見や立場がはっきりとしていて、つねに裏付けとなる情報を集めています。しかし、政治的への関心の高さゆえにどの政党を支持するかによって情報源が偏ってしまう場合も…。とりわけ個々人のコロナ対策においては、大きな弊害となっているようです。ボストン在住の医師が解説。

【無料】メルマガ登録はコチラ

リベラル派はCNN、保守派はFOXニュースを視聴

2007年の春、私は研究留学のため、スーツケースを2つ持って独り、成田を出発しました。ボストンに到着すると、すぐに研究所で仕事が始まりましたが、生活のセットアップに苦労しました。テレビの契約のやり方がわからなかったので、節約にもなるから…とアパートの共有の場にあるテレビでニュースを見ることにしました。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

そこでは毎日CNNが流れていて、オバマ大統領の予備選挙戦のニュースなどを目にしました。ただし英語がよく聞き取れず、政治の話もよくわからず、一緒に見ている人に意見を聞かれても戸惑うばかりでした。

 

当時、なぜCNNが流れていたのか考えもしませんでしたが、今振り返ると偶然ではありませんでした。ボストンはリベラル派とされる民主党支持者が多く、CNNを好む人が多いためです。一方、保守派とされる共和党支持者の多い地域では、FOXニュースが圧倒的に人気です。

 

※「医師×お金」の総特集。【GGO For Doctor】はコチラ

視聴番組の違いが「まったく違う認識」を生み出す

「ザ・ヒル」によると、2018年、オバマ大統領は、ライス大学ベイカー公共政策研究所の25周年記念イベントで次のように語りました(【 】の部分は著者が追加)※1

 

「1981年、ニュースサイクルはまだ、AP通信、ワシントンポスト、おそらくニューヨークタイムズの記事と3つの放送局【ABC、CBS、NBC】によって支配されていました。ウォルター・クロンカイト【元CBSイブニングニュースのアンカーマン】からニュースを受け取ったのか、デイヴィッド・ブリンクリー【元NBCとABCのニュースキャスター】からニュースを受け取ったのかに関わらず、彼らは共通の事実について同意する傾向がありました」

 

「現在のメディアの環境は、米国人が『共通の事実に合意する』ことはもはやできません」「FOXニュースの視聴者とニューヨークタイムズの読者は、互いに『まったく違う現実』に住んでいます」

 

そんなオバマ大統領は、2016年に、HBOのトーク番組「リアルタイム」で、ホストのビル・マー氏に、「FOXニュースを見たら、私も自分に投票しないでしょう」と語っています。

 

※1 https://thehill.com/homenews/media/418610-obama-ny-times-readers-fox-news-viewers-live-in-an-entirely-different-reality

ニュース二極化の始まりは、メディア業界の規制緩和

なぜ、それほどにニュースが二極化されたのでしょうか?

 

米国では、1980年にケーブルテレビのニュースチャンネルが始まって以降、「ビッグスリー」と呼ばれるFoxニュース、CNNとMSNBCが人気です。

 

2014年の「ハーバード・ポリティカル・レビュー(HPR)」※2は、「ケーブルニュースの今の時代は、メディア業界の規制緩和から始まった」と指摘します。

 

メディアとニュースを研究しているハーバード大学の歴史学教授ハイジ・トゥーレック博士は、「1996年の電気通信法が、現在の二極化された文化の発展における重要なターニングポイントで、より多くのケーブル事業者が自社製品【つまり、それぞれのケーブルテレビのニュースのイデオロギー】を配信することを可能にしました」と指摘します。

 

イデオロギー的に反対のニュースチャネルは、メディアの分極化の一因となります。HPRは、このような有毒な環境により、メディアへの信頼は1973年の85%から40%に低下したといいます。

 

※2 https://harvardpolitics.com/organized-polarize-cnn-fox-news-msnbc-roots-partisan-cable-television/

リベラル派と保守派は「メディア信頼度」でも真逆回答

ただし、メディアへの信頼は党派によって差があります。ハーバード大学のニーマン研究所は、「民主党は、ほとんどの報道機関を偏見のないものと見なしています。共和党は、ほとんどすべてが偏見をもつと考えています」と報告します※3

 

この報告では、ギャラップ調査の米成人1,440人を対象にしたナイト財団の研究による「ニュースの偏り」を引用しています。それぞれ「まったく偏りがない」または「あまり偏りがない」とみなす割合から、「極端に偏りがある」または「非常に偏りがある」とみなす割合を引いたものです。

 

図表1、2の正のスコアは、より多くの人がニュースを偏りのないものと見なし、負のスコアは、偏っていると考える人が多いことを意味します。

 

*ハーバード大学のニーマン研究所「Democrats see most news outlets as unbiased. Republicans think they’re almost all biased.」(2018年6月22日)の図を参考に著者が作成
[図表1]「ニュースの偏り」:民主党支持者の回答 *ハーバード大学のニーマン研究所「Democrats see most news outlets as unbiased. Republicans think they’re almost all biased.」(2018年6月22日)の図を参考に著者が作成

 

*ハーバード大学のニーマン研究所「Democrats see most news outlets as unbiased. Republicans think they’re almost all biased.」(2018年6月22日)の図を参考に著者が作成
[図表2]「ニュースの偏り」:共和党支持者の回答 *ハーバード大学のニーマン研究所「Democrats see most news outlets as unbiased. Republicans think they’re almost all biased.」(2018年6月22日)の図を参考に著者が作成

 

共和党は、FOXニュースとウォール・ストリート・ジャーナルを除いて、ほとんどすべてのニュースが偏っていると考えています。一方、民主党や民主党よりの独立派は、FOXニュース、ブライトバートニュースなどを除いて、ほとんどのニュースは偏見のないものと見なす傾向があります。

 

興味深いのは、この調査の結果、共和党は「CNN」を最も偏ったニュースとみなし、民主党は「FOXニュース」を最も偏ったニュースとみなしていることです。

 

※3 https://www.niemanlab.org/2018/06/democrats-see-most-news-outlets-as-unbiased-republicans-think-theyre-almost-all-biased/

報道スタイルにも大きな違いが…

それでは、FoxニュースとCNNのスタイルや歴史の違いはどうでしょう?

 

<保守的な視点でスタジオにてニュースを解説するFoxニュース>

Foxニュースは、1996年、オーストラリア生まれの米メディア王ルパート・マードック氏の下に設立されました。

 

前述のHPRによると、Foxニュースの歴史を研究した多くの人の意見では、マードック氏のネットワークへの関心は収益までにすぎません。Foxニュースの保守主義の源泉は、マードック氏が、大物テレビプロデューサーで元共和党オペレーティブのロジャー・エールズ氏を雇ったことにあると考えられています。

 

ニューヨークマガジンのガブリエル・シャーマン氏は、HPRに、「エールズ氏はFoxニュースの組織構造を根本的に変え、同業他社とは一線を画しました」「Foxニュースは、ニュースチャンネルとして見せかける政治活動として運営されています」と語ります。Foxニュースの専門家は、常に保守的な視点で出来事を解説しています。

 

<現場のライブ報道でニュース速報を伝えるCNN>

CNNは、ニュース番組に特化した最初のケーブルチャンネルとして1980年に開始されました。メディア業界人、慈善家のテッド・ターナー氏とTVジャーナリスト兼エグゼクティブのリース・ショーンフェルド氏が共同創始者です。

 

HPRは、「CNNは解説ではなく、主に『ニュース速報』『現場での報道』として設定されており、公平なニュースとして宣伝することは、CNNにとって有益」といいます。アメリカン・ジャーナリズム・レビューは「広告主はCNNの評判が好きで、多額のお金を払っても構わないと思っています」と評しますが、このニュースモデルは、コンテンツの多くがスタジオ外にあり、競合他社よりも数十以上の制作チームに資金を出さなければならないという欠点があります。

 

※4 https://harvardpolitics.com/organized-polarize-cnn-fox-news-msnbc-roots-partisan-cable-television/

「メディアの好み」は各々のコロナ対策にも大きな影響

新型コロナウイルスのパンデミックにおいて、適切な予防策を知るために、メディアの情報が鍵になります。米国人の行動は、好みのメディアに応じて異なります。

 

そこで南カリフォルニア大学の研究者らは、保守派またはリベラル派のメディアへの信頼によって予防策が異なるか、パンデミックの最初の数ヵ月で違いがどのように変化したかを調査し、2020年10月のイギリス医師会雑誌(BMJ)グローバルヘルスに報告しました※5

 

対象は、南カリフォルニア大学のアメリカを理解する研究(UAS)に参加する4800人以上のさまざまなメディアを信頼する人です。研究者らは、リベラル派のニュースの例にCNN、保守派のニュースの例にFoxニュースを使用し、メディアの好みを次の3グループに分類しました。

 

(1)FoxニュースよりもCNNを信頼している

(2)どちらでもない

(3)CNNよりもFoxニュースを信頼している

 

そして、2020年3月10日から6月9日まで、以下のような感染の予防および危険な行動を調べました。

 

***************

感染の予防:

(1)マスクを着用する

(2)1日に数回石鹸で手を洗う、または手指消毒剤を使う

(3)個人的または社会的活動を中止または延期する

(4)レストランでの食事を避ける

(5)公共の場所、集まりや人混みを避ける

 

危険な行動:

(1)バー、クラブや人が集まる場所に出かける

(2)友人、隣人、親戚などの他人の家を訪ねる

(3)友人、隣人、親戚などが自宅に訪ねる

(4)パーティー、コンサート、宗教的奉仕など10人以上が参加する集会に出席

(5)同居していない人と(6フィート以内で)密接に接触

***************

 

結果、回答者の約29%がFoxニュースよりもCNNを信頼していると答え、約半数(52%)は好みを表明せず、20%がCNNよりもFoxニュースを信頼していると答えました。

 

そして、CNNよりもFoxニュースを信頼している人は、予防的な行動が大幅に少なく、危険な行動が多いことがわかりました。これら2つのグループの違いは5月に広がりました。

 

研究者らは、次のように警告します。

 

「パンデミック以来、CNNは医療の専門家の見解や推奨事項に一致する、比較的一貫したメッセージを提供してきました。一方Foxニュースは、共和党政権のメッセージと一致するように、パンデミックの危険性を一貫して軽視したり、共和党指導者の見解を反映するために、メッセージをすり替え続けました」「そのため、Foxニュースの視聴者はパンデミックについて理解せず、健康のための行動が不十分になります」

 

「公衆衛生の危機において、健康の情報に対して政治的な見解を減らし、科学に基づく中立的で専門的な情報を流すべきです」

 

信頼できる情報を見つけるために、一つのメディアだけではなく、いくつかメディアを比べてみましょう。また『まったく違う現実』を知ることも大切です。反対の意見や立場を理解することができますし、自分の意見や立場がより明瞭になりますので。

 

※5 https://gh.bmj.com/content/5/10/e003323

 

【記事をもっと読む】

 

大西 睦子

内科医師、医学博士

星槎グループ医療・教育未来創生研究所 ボストン支部 研究員

 

 

【4-5月開催のセミナー】

 

【4/24開催】40代会社員が始める「新築ワンルームマンション投資」の大原則

 

【4/24開催】「eスポーツ」×「障がい者就労支援」日本初FC事業の全貌

 

【4/26開催】社会貢献安定収益を両立「児童発達支援事業」の魅力

 

※  【5/8開催】投資すべきNo.1「フィリピン」を活用した資産防衛永住権取得

 

【5/12開催】「遺言書」で「思い通りの遺産分割」を実現する相続対策

 

【5/15開催】入居率99%を本気で実現する「堅実アパート経営」セミナー

 

【5/15開催】利回り20%売却益2千万円獲得!中古1棟アパート投資

 

少人数制勉強会】30代・40代から始める不動産を活用した資産形成勉強会

 

医師限定】資産10億円を実現する「医師のための」投資コンサルティング

星槎グループ医療・教育未来創生研究所 ボストン支部 研究員 内科医師、医学博士

米国ボストン在住。東京女子医科大学卒業後、同血液内科入局。国立がんセンター、東京大学医学部付属病院血液・腫瘍内科にて造血幹細胞移植の臨床研究に従事。2007年より、ボストンのダナ・ファーバー癌研究所に留学し、ライフスタイルや食生活と病気の発生を疫学的に研究。08年から13年まで、ハーバード大学で、肥満や老化などに関する研究に従事。ハーバード大学学部長賞を2度授与。現在、星槎グループ医療・教育未来創生研究所ボストン支部の研究員。

【主な著書】
『カロリーゼロにだまされるな――本当は怖い人工甘味料の裏側』(ダイヤモンド社)
『「カロリーゼロ」はかえって太る!』(講談社+α新書)
『健康でいたければ「それ」は食べるな』(朝日新聞出版)

著者紹介

医療と社会の間に生じる諸問題をガバナンスという視点から研究し、その成果を社会に発信していく特定非営利活動法人「医療ガバナンス研究所」による学会。「官でない公」を体現する次世代の研究者の育成を目的とし、全国の医療従事者が会員として名を連ねている。

著者紹介

連載医療従事者が本音で語る「日本社会」の現状~GGO For Doctor

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧