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信じがたい…70年代電通のマーケティング「戦略十訓」
マーケティングの本質は、すでに満ち足りている人に対して「まだこれが足りてないのでは?」とけしかけて欠乏の感覚をもたせ、新たに問題を生み出すことで「ゲーム終了」を先延ばしすることです。
では具体的に、どのようにすれば「需要の飽和」を先送りできるのでしょう?ここでは1970年代において、広告代理店の電通でマーケティング戦略立案のために用いられていた「戦略十訓」を確認してみましょう。具体的な内容は次のようになっています。
1.もっと使わせろ
2.捨てさせろ
3.無駄使いさせろ
4.季節を忘れさせろ
5.贈り物をさせろ
6.組み合わせで買わせろ
7.きっかけを投じろ
8.流行遅れにさせろ
9.気安く買わせろ
10.混乱をつくり出せ
…たしかに、これらのことができれば「需要の飽和」は先送りにできるかもしれません。
しかしおそらく、このリストを一読した人のほとんどは、内容に強い違和感を、あるいはもっと率直に言えば不快感を覚えたと思います。資源・環境・ゴミ・汚染といった問題が全地球的に議論されている現代の私たちから見れば、こういった意図をもって需要を誘起するのはあまりにも非倫理的だと思うかもしれません。
弁護をするつもりは毛頭ないのですが、ここで、このリストについて2つの点から注意を促しておきたいと思います。1点目は、このリストが作成された1970年代の人々の環境や自然に関する通常の認識は、今日の私たちのそれとは大きく異なっていた、ということです。
当時は多くの工場が猛毒の廃液を河川や海に垂れ流し、河川から瘴気のような腐臭が漂っていた時代だったということを思い出してください。悲惨な水俣病の原因となった新日本窒素肥料(現在のチッソ)水俣工場が、有機水銀の含まれた工場廃液を水俣湾へ垂れ流すことを停止したのは1969年のことです。
現在の私たちからすれば信じがたいような愚かさですが、当時の人々の感覚が、現在の私たちのそれとは大きく異なっていた点には留意しておかなければならないと思います。