ホンネでは「誰も個性的な人材など望んでいない」という事実 (※写真はイメージです/PIXTA)

数年かけて進められた先の大学入試改革は失敗に終わりました。山口周氏「教育現場におけるさまざまな取り組みが最終的に無効化される原因は、教育プロセスよりも、プロセスの出口に位置する就職活動およびその後に続く経済活動・社会活動の中にこそ潜んでいると思います」と語ります。それはどういうことでしょうか。※本連載は山口周著『ビジネスの未来』(プレジデント社)の一部を抜粋し、編集したものです。

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個性が生かされてこそ真の創造性が育つのか

■教育システムの再設計

 

教育の話に触れたいと思います。日本の教育システムについては昨今、教育学者および教育実務に携わっている人たちを中心として活発な議論が行われているので、私のような立場にある人間が「ああせい、こうせい」と細部の具体について申し上げるつもりはありません。

 

ただ、教育の門外漢である一方で、組織開発・人材育成・組織変革のプロジェクトに20年関わっているコンサルタントとして、外側から、現在進行している、いわゆる「教育改革」なるものを見ていると、いくつか「ボタンのかけ違い」とでも表現するしかない重大な誤謬があるように感じられますので、ここで問題提起だけはしておきたいと思います。

 

まずは次の抜粋を読んでください。

 

<今後における科学技術の発展や産業構造、就業構造などの変化に対応するためには、個性的で創造的な人材が求められている。

 

これまでの教育は、どちらかといえば記憶力中心の詰め込み教育という傾向があったが、これからの社会においては、知識・情報を単に獲得するだけではなく、それを適切に使いこなし、自分で考え、創造し、表現する能力が一層重視されなければならない。

 

創造性は、個性と密接な関係を持っており、個性が生かされてこそ真の創造性が育つものである。>

 

これを読めば、ほとんどの人が「ああ、最近よく言われていることだよね、で、これがどうかしたの?」と思うでしょう。しかし、これが実際にはそうではないのです。

 

この抜粋は1987年の臨時教育審議会編から引いたものです。これを読めば、昨今の教育関係者がしばしば口にする「創造性の重視」「個性の尊重」「詰め込み教育からの脱却」といった教育上の課題が、すでに30年以上前の段階でしかるべき筋によってオーソライズされていたということがよくわかります。

 

しかし、ではその後の日本の教育のあり方は、これ以前のものと比較して大きく変わったといえるでしょうか? 厳密な評価はなかなか難しいと思いますが、胸を張って「そうだ」と言える人は一人もいないでしょう。

 

ライプニッツ 代表 独立研究者
著作家
パブリックスピーカー

1970年東京都生まれ。神奈川県葉山町に在住。慶應義塾大学文学部哲学科、同大学院文学研究科美学美術史専攻修士課程修了。

電通、ボストン コンサルティング グループ等で戦略策定、文化政策、組織開発などに従事。『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』(光文社新書)でビジネス書大賞2018準大賞、HRアワード2018最優秀賞(書籍部門)を受賞。

その他の著書に、『劣化するオッサン社会の処方箋』『世界で最もイノベーティブな組織の作り方』『外資系コンサルの知的生産術』『グーグルに勝つ広告モデル』(岡本一郎名義)(以上、光文社新書)、『外資系コンサルのスライド作成術』(東洋経済新報社)、『知的戦闘力を高める 独学の技法』『ニュータイプの時代』(ともにダイヤモンド社)、『武器になる哲学』(KADOKAWA)など。

(的野 弘路=撮影)

著者紹介

連載日本人はコロナ後の世界をどう生きるべきか

ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティを取り戻す

ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティを取り戻す

山口 周

プレジデント社

ビジネスはその歴史的使命をすでに終えているのではないか? 21世紀を生きる私たちの課せられた仕事は、過去のノスタルジーに引きずられて終了しつつある「経済成長」というゲームに不毛な延命・蘇生措置を施すことではない…

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