幸福度ランキングの高い国ほど国民負担率も高いといいます。幸福度ランキングの上下と国民負担率の高低にほほとんど関係がありません。では、国民負担率を上がるとどんなポジティブな効果が期待できるというのでしょうか。※本連載は山口周著『ビジネスの未来』(プレジデント社)の一部を抜粋し、編集したものです。

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今後、日本で増税が避けられない理由

■租税率の見直し

 

租税率の見直しとは要するに「税金を上げろ」ということです。最近、私はいろいろなところでこの提案をしているのですが、このような提案をすると目を見開いて「コイツの頭は大丈夫か?」といった表情をする人が少なくありません。

 

おそらくは「これだけ生活が厳しいのにいったい何を言い出すんだ?」ということだと思いますが、モノゴトには必ずウラオモテがあるのですから、少し落ちついて、増税によって「奪われるモノ」だけでなく、「得られるモノ」についてもきちんと衡量してみましょう。

 

私自身は、ユニバーサル・ベーシック・インカムを導入し、さらに寄付等に代表される贈与のシステムを組み込むことを考えた場合、増税は避けて通れないと考えています。大体からして、現在の日本は税収で歳出を賄うことができない状態、いわゆるプライマリーバランスが恒常的にマイナスの状態が続いており、帳尻を合わすための借金が毎年積み上がっているのですから、現在以上の福祉水準を実現しようとするのであれば増税は絶対に避けられません。

 

そもそもからして日本の租税率は「低すぎ」ます。多くの人は「日本の税金は高い」と漠然と思っているようですが、日本の国民負担率は諸外国と比較して決して高い水準にあるわけではなく、OECD加盟36カ国のうち、8番目に国民負担率の低い国となっています。

 

【図1】を見れば、まず「日本の税率はそれほど高いわけではない」ということがわかると思います。

 

ここ数年、日本の国民負担率は40%台の前半から半ばをフラフラしている状況ですが、先進8カ国と呼ばれる国のうち、日本より負担率が少ない国はアメリカしかありません。一方でヨーロッパ諸国に目を転じてみれば、フランスの68%やフィンランドの63%をはじめとして、日本よりはるかに高い国民負担率の国が数多くあることがわかるでしょう。

 

日本の負担率でさえ高すぎると思っている人からすると、日本より20%も負担率が高いこうした国では、きっと国民が重税にあえぎながら道端の草を食べるような悲惨で貧しい暮らしを強いられているように思えるもしれません。ところが、これがまったくそうではないのですね。

 

(注1)OECD加盟国36カ国中34カ国の実績値。残る2カ国(アイスランド・トルコ)については、国 民所得の計数が取れず、国見負担率(対国民所得比)が算出不能であるため掲載していない。 (注2)括弧内の数字は、対GDP比の国民負担率。 出典:日本 内閣府「国民経済計算」等、諸外国 National Accounts(OECD) Revenus Statistics(OECD)
【図1】国民負担率(対国民所得比)の国際比較(OECD34カ国) (注1)OECD加盟国36カ国中34カ国の実績値。残る2カ国(アイスランド・トルコ)については、国
民所得の計数が取れず、国見負担率(対国民所得比)が算出不能であるため掲載していない。
(注2)括弧内の数字は、対GDP比の国民負担率。
出典:日本 内閣府「国民経済計算」等、諸外国 National Accounts(OECD) Revenus Statistics(OECD)

 

 

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ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティを取り戻す

ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティを取り戻す

山口 周

プレジデント社

ビジネスはその歴史的使命をすでに終えているのではないか? 21世紀を生きる私たちの課せられた仕事は、過去のノスタルジーに引きずられて終了しつつある「経済成長」というゲームに不毛な延命・蘇生措置を施すことではない…

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