「医者の息子」努力が続かない理由
あるいは学生が授業をさぼる。そうすると「なぜ出席させないんだ?」と怒鳴り込んでくる親もいれば、学生同士の諍(いさか)いに首を突っ込んで、「あの子供の親を訴えてやる!」と怒鳴り込んでくる親もいます。本当に笑い事では済まない話も少なくないのです。
親が医者、特に開業医であれば、自分の医院を子供に継いでほしいと思うのは人情でしょう。それはよく分かります。実際、子供のころから医者とはなんぞや、医者はいかに大変な職業で、しかし、いかにやりがいのある仕事かということを学んでいる人間のほうが、いい医者になれる近道にいるはずなのです。
ところが、そうした好循環が実際にはあまり築かれていないのです。むしろ、長い間、放任か過保護に育てたあとに、ただいきなり、「お前は医者になれ。医者は一生続けられるし、お金も人並み以上だから」と親のほうから言いだすのです。
子供のほうも、特に何になりたいわけでもないし、自然と親のあとを継ぐのかな、と思っています。まるで、医者の子供は自動的に医者になれると思い込んでいるかのようです。
しかし、そうした子供たちは、医者になることが至上命題であると思いつつも、本当に医者になりたいわけではないのです。だから真剣に努力をしたいとも思わないのです。そこが、あとの教育を託されたこちら側のつらいところです。
つまり、原点から始めなくてはいけないのです。自分の意志を持ち、目標を持つ。そこに向かって努力をする。そこで必要になる、それこそ〝学ぶ姿勢〞や〝生活習慣〞から叩き込まなくてはいけないのです。
いわゆる「受験勉強」は遠い先の話です。
たとえば偏差値40以下の子供であれば、受験のテクニックどころか、学力においては高校1年、場合によっては中学生からやり直しです。学ぶ姿勢などないからです。そしてここでいう学ぶ姿勢は、それなりの生活習慣がベースになります。
生活習慣は、性格にも起因します。人間教育に力を入れなければならない理由はここにあるのです。これはどんな職業につくにも大切なことですが、特に医者になるのであれば、必要なことだと思います。人間力を磨きながら、学ぶ姿勢を身につけてもらうように努力しています。
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