医学部専門予備校・TMPS医学館代表取締役の長澤潔志氏が、自らの経験談をもとに、医学受験専門予備校に通う生徒たちのゆがんだ実態について解説していきます。

親の教育方針のせいで歪んでしまう子供たち

多くの子供たちは、その部分が圧倒的に欠けています。それどころか、目的意識が全くない。医者になろうというのに、生きていくうえでのビジョンがないのです。それは、医者の家に育った子供であっても変わりはありません。医者というものの職業意識も倫理観すらも持ち合わせていない。

 

そんな子供たちがあまりに多過ぎます。

 

失礼ながら、親の背中から何も学んでいないのです。親が放任主義か過保護で、大事なことを何も教えていない証拠です。

 

(写真はイメージです/PIXTA)
(写真はイメージです/PIXTA)

 

これは、医者の子供だけに限りません。医者に限らず、働くということの意義、意味が分からなければ、憧れや興味も湧かず、誰もわざわざ働きたいなどとは思わないでしょう。それでも人は働かざるを得ない。

 

なぜ働くかと言えば、それはお金のためです。お金を稼ぐために働く、生活のため、医者の場合はさらに贅沢をしたいから。そんな目的のために医者になられては困るのです。

 

親が子供に勉強の尊さ、楽しさを教えていない。父親は「忙しい」「疲れた」と言うだけで、家庭にそうしたムードがない。それで受験の話になると、急に「勉強しろ!」「こんな問題もできないのか!」と怒鳴る。それでは子供があまりにかわいそうです。

 

それまで欲しいものはすべて買い与え、甘えるだけ甘えさせて育てる。一方で「勉強しろ!」と言いながら、成績の結果ばかり求め、過保護は続けるのです。

 

いろいろな親がいます。

子供を叱らず擁護する親たち

最近、私の所に一本の電話がかかってきました。それは現在うちの予備校に来ている学生の親でした。

 

その親は「実は頼みがあるのです」と切りだしました。話を詳しく聞くと、「実は私の息子は18年間怒られたことがないのです。怒ったらきっとショックで反抗するでしょうから、うちの子は絶対に怒らないでください」と真剣に訴えるのです。

 

親が子供を怒ったことがない。呆れると言うべきか、驚きです。私たちにしても、怒りたくて怒る講師などいませんし、怒ったからといって、それで子供たちの成績が伸びるというわけでもありません。

 

しかし、教育には怒ることが必要なことも当然、あります。始終、ニコニコしていて使命が果たせる教育者など、本来あるはずもないと私は思っています。

 

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本連載は、『医学部受験の闇とカネ』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。なお本記事で紹介している内容は、著者の体験をもとに執筆しております。万一、本連載の記載内容により不測の事故等が生じた場合、著者、出版社はその責を負いかねますことをご了承ください。

医学部受験の闇とカネ

医学部受験の闇とカネ

長澤 潔志

幻冬舎メディアコンサルティング

講師歴30年の医学部専門予備校代表の長澤潔志氏が、実体験をもとに、合格率を偽って、「授業料を挙げる予備校」、「コネとカネがなければ合格できない推薦枠を設ける大学」、「指導力不足で受験生を浪人に導く高校」など、さま…

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