医学部受験専門予備校では、いろんな生徒がやってきます。「お前、女なのだから、やめたっていいんだよ」「この子がかわいそうだから、私も寮に泊まります」など、医学部受験をする生徒や親が抱える闇について、医学部専門予備校・TMPS医学館代表取締役の長澤潔志氏が解説します。

子供に必要なことは、職業観を持たせること

私は時に、親元にこのまま置いておいたのでは事態が進展しないと考えて、ご両親と相談して、一時、お子さんを自宅などに預かり、生活をともにして何とかその子の性格の歪みを直そうとすることがあります。

 

あるケースでは、寮のような扱いにしているマンションに住まわせていた男子生徒がいました。1カ月ほどすると、その子が泣いてやって来るのです。どうしたのかと聞くと、「寂しい。うちに帰りたい」と言うのです。21歳の男性です。

 

(写真はイメージです/PIXTA)
(写真はイメージです/PIXTA)

 

その家の場合は通常のケースと逆で、彼は「お父さんに会いたい」と言うのです。お父さんが彼を溺愛していました。お母さんは感情的で、ちょっと近寄りがたいところがありました。

 

お父さんと息子が仲がいいというのは珍しいケースです。そのあとどうなったかというと、家に帰りはしなかったのですが、父親に連絡を取ったのでしょう。毎晩、父親が自分の病院から仕事帰りにやって来て、一緒に泊まって、それで朝帰っていくという生活になってしまったのです。

 

しばらくは、それを止めることができませんでした。「お父さん、それではお子さんはいつまで経っても成長しませんよ」と何回も言ったのですが、「いや、そんなことはない。この子がかわいそうだ」の一点張りでした。

 

その子の偏差値は52〜53です。しっかりと叩き上げれば、合格圏に入る可能性は決して低くないのです。でも、ダメです。何もできません。勉強している間に泣きだすのです。そうした子供を医者にすることができるのでしょうか。いや、本当にしてもいいのでしょうか。私は悩みます。

 

私たちのころもそうですが、昔の子供は皆、早く大人になりたかったものです。早く親のもとから独立したいと思ったものです。そのために背伸びもし、時には悪さもしました。

 

今の子供たちは違います。過保護に育てられた子供たちはわがままです。わがままだから、少しも成長しない。勉強においてもそうです。彼らをそうしてしまったのは親なのです。それでは親としての責任を果たしているとは言えません。

 

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本連載は、『医学部受験の闇とカネ』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。なお本記事で紹介している内容は、著者の体験をもとに執筆しております。万一、本連載の記載内容により不測の事故等が生じた場合、著者、出版社はその責を負いかねますことをご了承ください。

医学部受験の闇とカネ

医学部受験の闇とカネ

長澤 潔志

幻冬舎メディアコンサルティング

講師歴30年の医学部専門予備校代表の長澤潔志氏が、実体験をもとに、合格率を偽って、「授業料を挙げる予備校」、「コネとカネがなければ合格できない推薦枠を設ける大学」、「指導力不足で受験生を浪人に導く高校」など、さま…

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