ある日突然、老親が緊急搬送で入院という事態が起こります。介護は毎日のことなので、使命感だけでは長続きはしません。10年以上、仕事をしながら父母の遠距離介護を続けてきた在宅介護のエキスパートは、「介護する人が幸せでなければ、介護される人も幸せにはならない」と訴えます。入院や介護に備え、知っておきたい制度やお金の話から、役立つ情報、具体的なケア方法までを明らかにします。本連載は渋澤和世著『親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…』(プレジデント社)から抜粋し、再編集したものです。

食事はどんぶりで多くの食材を一度にとる

私の母は要介護度により食器を替えています。要介護1はセパレート、要介護3でワンプレート、要介護5はどんぶりです。そして、要介護5で飲み込みが悪く、むせやすくなってからは、味噌汁用のサイズのお椀を複数個利用しています。

 

箸を使用できた要介護1は、ご飯、主菜、副菜、汁物は家族と同じものを取り分けていました。要介護3になり食べこぼしや、これが食べたいという意思表示がなくなったのでワンプレートに取り分けました。要介護5で全介助になってからは、まだ、飲み込みが順調なときはどんぶりにすべてのせることを徹底しました。ハンバーグもどんぶりにのせてロコモコ風です。

 

飲み込みが悪く、食事介助も時間がかかるようになったとき、味噌汁サイズのお椀を複数準備しました。食形状もなめらかな状態のため、どんぶりだと混ざり合ってしまいますし食べる量も少なくなるため、違う食べ物を口に運んで食欲をそそった方が良いからです。

 

介助スプーンは高齢者には薄い色が見えにくくなるため、赤系の識別しやすい色がいいという。(※写真はイメージです/PIXTA)
介助スプーンは高齢者には薄い色が見えにくくなるため、赤系の識別しやすい色がいいという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

認知症は色々なものが出てきても、どうやって食べたら良いのか理解ができず同じものを食べ続けることがあります。その傾向が出てきたら沢山のお皿よりもカレーライス、丼物、おにぎりが食べやすくなります。パンも良いのですが、のどに詰まりやすく、むせたからと水を飲ませると膨らむので注意してください。

 

食事介助は時間がとてもかかりますが1時間が限界です。必要以上に介助者が負担になることは避けましょう。盛り付けよりも食べることが最重要です。作る、食べさせる、洗い物が楽ならそれで良いのです。食べたものはおなかに入れば栄養は一緒と割り切りましょう。

 

カップは同じものをふたつ準備する

 

上口部と底部が同じ大きさの長方形のカップより、上口部が広く底部が狭い台形のカップが本人も介助者も使いやすいと思います。台形なので口に入るタイミングの確認がしやすいのです。このサイズは、お茶やジュースのほか、スープ類にも使えるのでふたつ同じものを揃えることをお薦めします。

 

水分管理をする場合、カップのどこまでが100㏄、150㏄、200㏄なのか、一度計量カップを使って確認しておくと良いでしょう。カップに絵を描けるペンが販売されているので内部に印をつけておくのも一案です。

 

介助の際、スプーンで口に運ぶのは、固形物だけにしています。液体は全てカップからです。口に入れるまで固形か液体かわからないのは不安です。固形は口を大きく開ける、液体は唇をすぼめてすする。この動作は全く違うのです。介護が始まったら、多くの種類よりも固定の食器を多用途に使用しましょう。

 

食事介助用品のポイントは赤系色であること

 

誤嚥性肺炎で入院した人は、絶食期間もあり食べることを忘れかけることもあります。そんなときでもお椀を渡すとスイッチが入り自分で食べはじめることがあります。この動作には食器の色が影響しています。

 

実は、色がはっきりした中面が赤いうつわの方が目に入るので手が出やすいといわれているのです。介助スプーンも高齢者は薄い色が見えにくくなるため、赤系の識別しやすい色で、かつ口当たりが優しくて歯にも優しいシリコーン素材のスプーンが適しています。普通の金属スプーンの場合、咬んでいるときに無理に抜こうとしたり、歯にカチカチとあてすぎると、歯に影響が出て抜けやすくなってしまいます。口を開いてくれないときは、下唇にスプーンの腹をあてると食事と認識して開口しやすくなります。

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親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…

親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…

渋澤 和世

プレジデント社

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