ひとくくりに「医師」と言っても、勤務医と開業医とでは経済状況がまったく違います。開業医のほうがより高収入で、その差は約2倍とも…。いくら高水準でも、勤務医の多くは、日々の激務を考えると「見合わない」と感じているようです。いずれ開業を視野に入れている人も少なくないでしょう。勤務医時代そんな人にとって、実は不動産投資が一石二鳥であることをご存じでしょうか。資金面だけでなく「経営ノウハウを学ぶ」という意味においても、非常に役立つのです。

不動産投資が「独立開業の近道」であるお金以外の理由

医師のライフプランに欠かせない「資産形成」。数ある手段のなかでも「不動産投資」は多忙な医師が安心して取り組める資産運用法であると言えます。そしてこの不動産投資経験が、将来のクリニック開業に大変役立つのです。

 

開業医も一般企業の社長と同じ一人の経営者です。開業後は事業計画の策定や資金調達の方法などについて一通り学ばなければなりません。不動産投資にはそんな「経営ノウハウ」がたっぷり詰まっているのです。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

 

まずは、クリニック開業までの一般的なフローについて説明しましょう。

 

<開業までの一般的なフロー>

①診療科目や診療方針など、新規開業のためのコンセプトを固める。


②診療科目に相応しい開業場所を選定するため、複数の候補地へ赴きマーケティングを行う。


③開業場所が決まったら、事業計画を組んで資金調達(収支を想定して金融機関に相談)をはじめる。


④クリニックの内装工事業者や医療機器搬入業者を選び、並行して保健所との折衝を行う。


⑤医院開設届、保険医療機関指定申請などの行政関連手続きを行う。


⑥開院日を確定したら、スタッフを募集して書類審査・面接を行い、採用決定者と雇用契約を結ぶ。


⑦「クリニック新規オープン」の広告宣伝(看板やチラシの手配)を行う。


⑧開院。

 

上記①の診療科目については、勤務医時代の専門科目で開業することになるでしょう。

 

②の開業場所については、たとえば「近年若いファミリーの転入が多く、小児科のニーズが高まっている」とか、「高齢者が多く、リハビリ施設を備えた整形外科のニーズが高い」など、診療科目ごとのエリア・マーケティングが必要になります。

 

そして③はクリニック開業に限らず、一般企業設立や不動産投資においても同じフローとなります。

 

上記のフローをご覧いただくとわかるように、①から③は勤務医として働いている間でも先行することができます。自分の専門科目が不足しているエリアを早期に発見し、駅前など利便性の良い場所に開業予定物件を抑えておけば、後発のライバル医院に差をつけることも可能です。

 

ただ、「抑える」といっても空室にしておくわけではありません。開業する前、すなわち勤務医として働いている間は賃貸運用し、開業計画が固まった段階で賃貸借契約を終了し、自ら経営するクリニックとして活用するのです。

 

独立開業すると、電気代や水道代などの些細なものから従業員への給与支払い、看板・チラシなどの広告宣伝費とさまざまな運営経費がかかってきます。

 

開業医も一般企業の社長と立場は同じですので、ビジネスを成功させるための知見を深めなくてはなりません。勤務医時代に何も学ばず、集客手段や利益と必要経費のバランスもわからないまま見切り開業するのは大変危険です。不動産投資で一通りの経営経験を積んでおけば、節税の知識を含めた経費感覚が自然と身に付きます。

 

医療系テナント専用の「クリニックビル」を区分所有

全テナントが各種診療科目の病院や処方箋薬局など医療系業種に限定された「賃貸用クリニックビル」が全国各地に誕生しています。それは都心部だけでなく郊外のベッドタウンにおいても需要が高まっており、こういった賃貸用クリニックビルを区分所有することも可能です。さまざまな診療科目と薬局が一箇所にまとまっていれば集客効果が上がりますし、診察の後に薬局へとあちこち行かなくて済むので患者さんにも歓迎されます。

 

賃貸用クリニックビルのニーズが高まっている背景には、医療業界を取り巻く政治的要因が絡んでいます。高齢化が相まって膨れ上がる医療費削減のため、政府では医療機関の統廃合や病床数の調整を推進しており、病院施設数は減少の一途をたどっています。その一方で医師の数は年々増えて続けているため、勤務医の就職先がどんどん少なくなり、医師の選択肢は「開業」へと向かっているのです。

 

今後さらにニーズが高まる予測に加え、テナントは申し分ない属性の医師や薬剤師です。一般の不動産投資家たちも区分クリニックビル投資に少しずつ進出していますが、同じ業界にいる医師が所有する賃貸物件があれば、テナントは自ずと同士を選ぶことでしょう。

 

<まとめ>

クリニック開業を目指す医師にとって不動産投資をはじめることが大変有益であることがお分かりいただけたと思います。開業準備期間の短縮がかなう上、「家賃」という安定した副収入を得ることができます。エリア・マーケティングも余裕を持って進められるので、多くの候補地をじっくり比較・検討することが可能です。

 

将来の開業予定物件を購入する際は、クリニックへの改装が可能な区分マンションや区分オフィスを選びましょう。また賃借人との賃貸借契約形式は、オーナーが決めた期限をもって賃貸借契約を終了できる「定期借家(定借)契約」にしておくことが必須です。この他にもさまざまな注意点がありますので、まずは専門知識に長けた不動産業者に相談することをおすすめします。
 

 

大山 一也

 

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