「クリニックの開業」と「医療法人の設立」は何が違うのか?

キャリアアップや資産形成のため、「いずれはクリニックを開業したい」と考えている医師の方は多いと思います。ただ、開業した「後」のことはどうでしょうか? 今回は、事業拡大や事業承継を考えるうえで欠かせない「医療法人化」について見ていきましょう。

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開業したら、次のステップは「医療法人の設立」

キャリアアップや資産形成のため、「いずれはクリニックを開業したい」と考えている医師の方は多いと思います。

 

しかし開業までがゴールではありません。その先は「特別養護老人ホーム」や「サービス付き高齢者向け住宅」へと事業拡大の夢を膨らませることもできます。

 

そのためには「医療法人」の設立を考えなくてはなりません。今回は、個人の開業医が医療法人を設立することの意義と留意点について説明します。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

クリニック開業後、地域医療機関としての知名度・信頼度が上がり、多くの患者からさらなるサービスを求められるようになったら「医療法人化」を考えはじめるべきです。

 

個人医院でも保険医療機関であれば「みなし介護保険事業者」として扱われ、居宅療養管理指導や訪問看護・訪問リハビリなどを実施することはできますが、医療法人を設立すれば介護保険の適用を受けて下記のような施設を設立することも可能になります。

 

●介護をメイン業務とした「特別養護老人ホーム」

●高齢者のリハビリを中心とした「介護老人保健施設」

●長期入院患者を対象とした「介護療養型医療施設」

 

いずれも要介護認定者を対象とした施設で、今後さらに加速するであろう高齢化に即したサービスです。とくに特別養護老人ホームはニーズが高いものの都市部における施設数が極めて少なく、多くの高齢者が「空き待ち」状況にあります。そのため、都市部での特別養護老人ホーム開設は大きなビジネスチャンスとなります。

 

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医療法人を設立するメリット・デメリット一覧

医療法人化によるメリットは以下の通りです。

 

<メリット>

●医療分野でのさらなる事業拡大が可能になる。

●医師(医療法人代表者)が確定申告時に給与所得控除を受けられる。

●家族を役員にして役員報酬を支払い、経費計上することができる。

●最高税率の低い「法人税」が適用される。

●医師(医療法人代表者)が退職金を受け取れる。

●医師(医療法人代表者)の退職後は、親族などに事業承継できる。

 

その反面、下記のようなデメリットもあります。

 

<デメリット>

●決算書や事業報告書などの提出義務がある。

●年間の報酬総額に関係なく毎年均等割の地方税がかかる。

●接待交際費の経費計上額に上限がある。

●厚生年金・健康保険への加入義務がある。

 

医療法人に限らず一般企業も同じことですが、法人化により組織が大きくなれば届出事務・税務・労務リスクが高まって当然です。とはいえ、毎月の収支バランスを見据えながら果敢に邁進していくことでこれらの課題は解決できます。

不動産投資の経験があれば「サ高住の開設」も怖くない

医療法人後、特別養護老人ホームなどの経営が軌道に乗れば、次に目指すのは「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」の開設です。近年では、日常家事を難なくこなし独居している高齢者も増えてきました。そういった自立可能な人たちを対象とした賃貸住宅が「サ高住」です。

 

サ高住は一般的な賃貸住宅をバリアフリーに仕立てた物件で、サービス内容によって「一般型」と「介護型」に分かれます。一般型は建物内にサポートスタッフが日勤し、入居者の万一の体調不良や事故の際に対応するものです。

 

介護型は介護資格を持つ専門スタッフが常駐し、入居者の介護等級に応じ必要なサービスを施します。年々高まるサ高住へのニーズを受けて一般企業の参入も増えていますが、医学のスペシャリストである医療法人が直営するサ高住であれば、入居者はより安心感を持つことでしょう。

 

サ高住の開設を目指すのであれば、まずは不動産投資に関する知識を身に付けるべきです。サ高住は高齢入居者の介助・介護サービスがメインのビジネスではありますが、物件選びや入居者ニーズの把握などは一般的な賃貸住宅と同様で、賃料設定をはじめとした経営戦略にも相通ずるところがあります。手はじめとしてワンルームマンションなど小規模物件で賃貸運営を経験しておくことも将来の糧となります。

「スムーズな事業承継」のためにも医療法人化は必須

引退後、医師になった息子や娘にクリニックを譲る場合も医療法人が有効に機能します。

 

個人医院(個人事業主)のままでは身内を含む他者に事業承継することはできません。個人医院の開設許可は院長に対してのみのものであり、院長引退によってその効力は消滅します。そのとき息子や娘が医師として引き継げる状況にあっても、いったん廃業して新たな開設許可を取らなくてはなりません。

 

引退までに医療法人化すれば、その名称や営業許可項目が代表者以外に譲渡できるので、息子・娘はもちろんM&Aによって第三者へ売却することも可能です。

 

<まとめ>

 

医療法人設立には理事3名以上と幹事1名以上が必要で、開業早々で実績のない個人医院では許可が下りにくいといわれます。また設立当初からいきなり特別養護老人ホームやサ高住といった大規模事業をスタートさせるのは至難の業です。

 

まずは指定在宅サービス事業(訪問介護・看護)で土台固めをし、軌道に乗った段階で大規模事業へシフトした方が賢明でしょう。

 

まずは身近な患者さんへのサービスから少しずつ実績を上げて、地域の信頼を徐々に厚くしていくことが大切です。

 

 

大山 一也

 

 

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株式会社トライブホールディングス 代表取締役社長

1979年生まれ。東京の不動産投資会社にて、土地売買からアパート、マンション、ビル建設までを幅広く手掛ける。自らが考える不動産価値と収益を最大化する不動産物件を実現するため、2010年に㈱トライブを共同で設立。翌2011年、同社代表取締役就任。これからの高齢化社会では、不動産と医療は密接に連携すべきという持論の下、高収益と高付加価値を同時に実現する独自の不動産物件を多数手掛ける。自ら沖縄の医療法人にも助力し、倒産しかけた医療施設の再建に乗り出し、再生させた。また、新たな医療法人の立ち上げにも参画し、地域医療の活性化に努めている。著書に『なぜ医者は不動産投資に向いているのか?』『資産10億円を実現する 医師のための収益物件活用術』(いずれも幻冬舎)がある。

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