ある日突然、老親が緊急搬送で入院という事態が起こります。介護は毎日のことなので、使命感だけでは長続きはしません。10年以上、仕事をしながら父母の遠距離介護を続けてきた在宅介護のエキスパートは、「介護する人が幸せでなければ、介護される人も幸せにはならない」と訴えます。入院や介護に備え、知っておきたい制度やお金の話から、役立つ情報、具体的なケア方法までを明らかにします。本連載は渋澤和世著『親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…』(プレジデント社)から抜粋し、再編集したものです。

親世代は「助けて」と言えず頑張ってしまう

老老介護、認認介護、病病介護のせつない現実

 

65歳以上の人が65歳以上の人を介護する老老介護、認知症の人が認知証の人を介護する認認看護、病気の人が病気の人を介護する病病介護の割合が増加の一途です。配偶者同士で支え合う割合が高いのですが、65歳を過ぎた子が90歳の親を看る、うつ病や癌を発症した子が認知症の親を介護するなどの事例も増えています。

 

お互いが相手の主介護者として支え合っているのですが、この状況下では必要な情報が行き届かず、ケアプランの判断もできず、適切な介護がされない場合も想定されます。

 

介護施設に入居するのはまだ躊躇するけれど、このままの状態が不安なときは、他人の目が入るサービス付き高齢者向け住宅などに住み替えなども判断するタイミングかもしれません。要介護2というのが、独居や高齢世帯にとって、自分の家に住み続けることへの限界判断のひとつになります。

 

65歳以上の人を65歳以上の人を介護する老老介護、認知症の人が認知証の人を介護する認認看護、病気の人が病気の人を介護する病病介護の割合が増加しているという。(※写真はイメージです/PIXTA)
老老介護、認認看護、病病介護の割合が増加しているという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

認知症ではないのに歩けない父親と認知症なのに身体が元気な母親

 

これは晩年の私の両親のケースです。最悪な取り合わせでした。両親の希望で生まれ故郷の実家に戻り、施設への入居は絶対にイヤだというので、自宅で細々と暮らしていました。

 

元気だった父が、脳血管障害の一歩手前で呂律が回らず自立歩行も徐々に困難になっていきます。そんな父でしたが母は元気な父しか覚えていないため、買い物を依頼します。無理して出かけた父は転倒し、見ず知らずの方に車で送ってもらう事件もありました。母は認知症のため看病も掃除もできず、家の状況も劣悪になっていきました。

 

介護保険のサービスや配食サービスを利用しても限界と感じました。元気だった親が弱ったとき、その配偶者が認知症では適切なお世話ができません。そして共倒れ、疲れによる虐待にもつながりかねません。私の後悔でもあるのですが、もっと元気な父の方を定期的に気にかけていれば、父の急激な身体衰弱の進行を防げたかもしれないのです。

 

退院後こそ元気な親のケアをする

 

片親が元気だと、退院後も任せて大丈夫そうと思ってしまいます。ただ、親も体力が年々低下し抵抗力が弱くなるのは事実なのです。退院は喜ばしいことなのですが、これから在宅で支えていくのは大変な労力です。

 

親世代は「助けて」と言えず自分が頑張ればと耐えてしまう世代です。共倒れにならないような配慮が必要です。介護保険のサービスを利用しながら、子が一緒に介護する体制を整えつつ乗り切れると良いのですが、家庭によっては、時間やお金、本人の気持ちの問題もあり、そう簡単には解決できない部分も多々あるのが現実です。元気な親が倒れないようにサポートする、という気持ちを忘れないでください。

 

介護サービスを使いたくないという場合

 

どちらかというとなのですが、男性は自分の家に来てくれる訪問介護は受け入れても、デイサービスなど通所介護で様々な人が集まる場所に行くことを拒む場合があります。以前、職場の男性がお遊戯とか歌とか自分は絶対にやらないと言い切っていました。最近は、半日でリハビリのみの予防型デイサービスが急増しています。

 

「ちょっと、そこまでリハビリに」と運動感覚のポジティブな理由だとプライドの高い方も出かけてくれるかもしれません。足湯なども取り入れているところもあるので、何か目的に合う取り組みをしているところがないかを探して提案するのも一案です。

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親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…

親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…

渋澤 和世

プレジデント社

高齢化が進む日本では現在、介護ストレスによる介護疲れが大きな問題だ。そこで本書では、仕事や育児との両立を前提に、「完璧な介護」ではなく「頑張りすぎない介護」を提案する。 正社員としてフルタイムで働きながら、10年…

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