ある日突然、老親が緊急搬送で入院という事態が起こります。介護は毎日のことなので、使命感だけでは長続きはしません。10年以上、仕事をしながら父母の遠距離介護を続けてきた在宅介護のエキスパートは、「介護する人が幸せでなければ、介護される人も幸せにはならない」と訴えます。入院や介護に備え、知っておきたい制度やお金の話から、役立つ情報、具体的なケア方法までを明らかにします。本連載は渋澤和世著『親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…』(プレジデント社)から抜粋し、再編集したものです。

介護は親のお金が基本!資産状況を共有する

親が認知症になる前に、キャッシュカードを必ずつくる

 

私の両親は銀行窓口でお金をおろしていたため、キャッシュカードを持っていませんでした。

 

実家からメインバンクは徒歩で15分、この距離を通うことが段々と大変になってきたのです。親が出向けないとき、私が出入金を代行するにはキャッシュカードが必要です。キャッシュカードの発行には本人の同意が必要なので説得し、一緒に出向いて発行手続きをしました。

 

親が自分の意思で判断できる時期につくらないと、後々大変です。カードを持つ人が使い込むなど外野は色々と言うかもしれませんが、親の財産を子が管理して何が悪いのでしょうか、要は信頼関係の問題です。

 

キャッシュカードの発行には本人の同意が必要なので説得し、一緒に出向いて発行手続きをしたという。(※写真はイメージです/PIXTA)
キャッシュカードの発行には本人の同意が必要なので説得し、一緒に出向いて発行手続きをしたという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

暗証番号の共有も忘れずに行ってください。地方銀行の場合、セブン銀行などコンビニエンスストアで引き出し手続きができるところが多くあります。その際の手数料は銀行によって異なるので、その確認もしてください。これらを準備することで離れていても引き出しがスムーズにできます。

 

親の貯蓄は片親が亡くなったときに明らかになる

 

介護を担うのは子であっても、介護費用は親のお金というのが通常の考え方です。月々の年金額や貯蓄により、利用できるサービスやその負担額も変わるため気になるものです。介護保険の普及により、最近は多くの家庭で介護という状況が一般的になり親から貯蓄や資産などの話を持ち出すケースも見られるようになりました。

 

私の家はごく普通のサラリーマン家庭でしたが、借金やローンがないことだけは明らかでした。負の資産がないことさえわかっていれば、親の貯蓄額はさほど深追いしなくても良いというのが私の考えです。片親が亡くなると、年金や保険、土地や預貯金の相続の手続きが発生します。このときにイヤでもわかるのです。きょうだいがいる場合、この時点で一度、親の資産情報を共有すると良いと思います。

 

自営業の場合は、年金額もしっかり確認

 

親がサラリーマンの場合、勤務年数にもよりますが、ある程度は生活ができる額は年金でもらえています。年金の1~3階建ての話を聞いたことがありますか? 要注意は、自営業です。親が自営業の場合は年金額をしっかりと確認を。思いのほか少ない場合があります。年金額が少ないなど所得が少ない場合、低所得者の利用者負担軽減措置があります。

 

親が該当するのかどうか、年金額や貯蓄を知らないと提言ができません。介護は親子で情報を共有することが、余計なお金を外に出さないことにつながります。

 

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親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…

親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…

渋澤 和世

プレジデント社

高齢化が進む日本では現在、介護ストレスによる介護疲れが大きな問題だ。そこで本書では、仕事や育児との両立を前提に、「完璧な介護」ではなく「頑張りすぎない介護」を提案する。 正社員としてフルタイムで働きながら、10年…

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