ある日突然、老親が緊急搬送で入院という事態が起こります。介護は毎日のことなので、使命感だけでは長続きはしません。10年以上、仕事をしながら父母の遠距離介護を続けてきた在宅介護のエキスパートは、「介護する人が幸せでなければ、介護される人も幸せにはならない」と訴えます。入院や介護に備え、知っておきたい制度やお金の話から、役立つ情報、具体的なケア方法までを明らかにします。本連載は渋澤和世著『親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…』(プレジデント社)から抜粋し、再編集したものです。

訪問介護(ホームヘルプ)に頼めること、頼めないこと

訪問介護員(ホームヘルパー)ってどんな人

 

訪問介護員(ホームヘルパー)が自宅を訪問し、可能な限り自立した日常生活を送ることができるよう支援するサービスが訪問介護です。事業所から派遣される訪問介護員は初任者研修修了者(旧ホームヘルパー2級修了者)以上の資格要件を満たすことが必要で、介護業務を行うに当たって必要な基礎知識やコミュニケーション技術のほか、実践的な入浴や食事介助、洗髪の方法についても学習しています。

 

介護のための訪問であり、当然ですが家政婦とは異なります。制度が変わってホームヘルパーという資格認定はなくなりましたが、親しみを込めてヘルパーさんと現在でも呼ばれています。

 

訪問介護員のできること、できないこと

 

訪問介護員の仕事は、できること、できないことが決められています。こちらが何気なく依頼したことを「それは対応外で、できません」と断ってきたとしても、その訪問介護員の個人的な感情ではないのです。できないことを要求しているのに、仕事をしない、気が利かないなどと苦情を言い続けると、事業者側からサービスの中止を通告される場合もあります。利用するに当たっては、制度の理解も大切です。

 

身体介護と生活援助の2つのサービス

 

訪問介護には身体介護と生活援助という2つのサービスがあります。食事・排せつ・入浴などは身体介護、掃除・洗濯・買い物・調理などは生活援助になります。生活援助は同居家族がいると受けられないのですが、その家族が障害や疾病などで家事を行うのが困難な場合は利用可能です。身体介護は20分未満、30分未満など利用する側からは誤差のような意識ですが、時間区分が厳密に設定されていて、負担額も異なります。

 

サービス内容を確認し、必要なサポートを厳選して依頼した方が良いでしょう。訪問介護員の個人指名は難しい場合がありますが、着替えなど羞恥心もあるかと思いますので、同性を希望などは考慮してもらえる場合があります。事業所に相談してみてください。

 

 

 

通院介助は依頼できる?

 

病院への送迎は通院等乗降車介助のサービスが事業所によっては利用ができます。ただし病院内の付き添いは医療機関での対応が原則で、訪問介護員に依頼した場合、自費負担となります。患者の身体状況などにより、介護保険が適用となるケースもありますので、利用条件などを担当のケアマネージャーに確認してください。

 

自治体のサービスやボランティアを利用する

 

介護保険で依頼が難しい支援は、自治体のサービスを利用(配食サービス、介護タクシー、外出支援、傾聴など)することもできます。ボランティアやシルバー人材、NPO法人が対応することもあり、介護事業所や便利屋やその他の専門業者より安い場合も多くあります。これら対応してもらえる団体の情報は、社会福祉協議会や担当のケアマネージャーに問い合わせ、相談してみてください。

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親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…

親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…

渋澤 和世

プレジデント社

高齢化が進む日本では現在、介護ストレスによる介護疲れが大きな問題だ。そこで本書では、仕事や育児との両立を前提に、「完璧な介護」ではなく「頑張りすぎない介護」を提案する。 正社員としてフルタイムで働きながら、10年…

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