不動産投資家にとって、投資物件の立地や価格は非常に重要な判断ポイントです。しかし、その部分だけ見て「お買い得」「割安」だと思って飛びつくと、想定外のデメリットが潜んでいるケースもあるため注意が必要です。本記事では、「利便性の高い準工業地域の一棟アパート」「バブル時代に建造された手ごろな区分マンション」「設備の整った借地権付きタワーマンション」を例に、一般投資家が見抜きにくい「訳あり物件」について解説します。

割安な「借地権付きマンション」の落とし穴

 

一般的に分譲マンションは「所有権(建物と土地の所有権が一体)」の物件が多いのですが、少数ながら土地が「借地権」の物件もあります。借地権には旧法賃借権と、平成4年に施行された新法借地権(定期借地権)があり、その取り決めはまったく異なるため、注意が必要です。

 

大きく違うのは、旧法が賃借人擁護であるのに対し、新法(定期借地権)は賃貸人擁護である点です。旧法は、土地上の建物が存在する限り賃貸借契約を更新できますが、新法(定期借地権)は契約期間が50年以上で更新はなく、契約終了時には建物を取り壊し、土地を更地にして地主に返還するというルールになっています。

 

事例として、都心の風光明媚な高台に建つ、ある中古タワーマンションのケースを見てみましょう。

 

その物件は、周辺のマンションより2割ほど安値で売られています。1戸だけが安いのではなく、そのタワーマンション内の住戸はどれも相場の2割程度安いのです。なぜなら、新法の定期借地権マンションだからです。借地なので毎月地代はかかりますが、固定資産税と都市計画税を支払わずに済みます。

 

建物を内覧すると、広々としたエントランスホールにはカフェスペースがあり、最上階には展望ラウンジ、ゲストルーム完備など共用部の充実ぶりに心惹かれます。住戸内からの眺望も良く、「相場の2割安でこのマンションが買えるなら借地権もアリかな」と契約してしまう人が多いようです。

 

しかし、土地の賃貸借契約残存年数によっては返済期間35年のローンは組めません。築年数が経つごとに長期ローンが組みにくくなり、将来売却する際も買手が付きにくくなります。さらに心配なのは、土地賃貸借契約終了後の解体費用です。タワーマンションともなれば膨大な費用がかかります。毎月の管理費等とともに「解体費用準備金」を積み立ててはいるものの、その積立額面内で工事が収まるかどうかは分かりません。

 

しかし、そんな心配をよそにここ数年、都心の好立地に建つ定期借地権付きタワーマンションは増えています。比較的安値で眺望豊かなタワーに暮らせるということで、20~30歳代の若いファミリーを中心に人気が高まっているようです。

 

ここを終の住まいと考えず、数年暮らして満足したら賃貸に出すのであれば、賢い選択かもしれません。タワーマンションであれば高い家賃収入が見込めますので、賃貸運用と並行して現金購入できる買主の申し出を待つのもいいでしょう。

デメリットを認識し、活用できるなら購入もアリ

 

価格だけに注目して物件を選んでいると、思わぬ落とし穴にはまることもあります。しかし、今回紹介した3例は絶対に「買うべきではない」物件というわけではないのです。デメリットを把握した上で安く購入すれば、賃貸運用を経たあと、転売益を得られる可能性もあります。

 

不動産投資や不動産購入を成功させるには、市場を読む力や知識が必要です。迷ったときは、専門家やファイナンシャルプランナーに相談してみることも一助となります。

 

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※本記事は、「ライフプランnavi」に掲載されたコラムを転載・再編集したものです。

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