準工業地域は、交通・商業利便性の良い場所が多いが…
「準工業地域」は、都市計画法によって定められた用途地域の1つです。準工業地域には住宅や店舗・オフィス、ホテルのほか「工場」も建てられます。
ここでいう工場とは、自動車部品工場や金属加工場程度の町工場を指しています。古くから町工場が林立するエリアは準工業地域に指定されており、東京の港区や中央区などの都心部にも準工業地域があります。
都心の町工場で働いているのは60~80歳代の高齢者で、後継者はおらず、工場経営者は「従業員が引退したら廃業する」と考えているケースがほとんどです。工場の立地は交通・商業利便性の良い都心の一等地です。廃業後は工場を取り壊し、土地を担保にローンを組んで賃貸アパートを新築すれば家賃収入が得られるでしょう。
しかし、その土地が金属加工場やクリーニング工場跡地である場合、洗浄剤等として有害物質を使用していれば土壌汚染が残る可能性があります。
賃貸アパートを建てることはできますが、問題はこのアパートが売りに出されたときです。
所有者(売主)が高齢のため過去の土地使用履歴を語らず、仲介する不動産業者が環境調査を怠ったら、土壌汚染の事実は買主に伝わりません。契約・引き渡しから数年後、アパートの入居者に土壌汚染による健康被害が発生した場合、いまの所有者(買主)がその責任を取らなくてはなりません。
土壌汚染が懸念される工場や作業所は、役所への届け出が義務付けられています。所轄の市区町村役所へ行けば届け出名簿が閲覧できますので、もし購入予定物件の用途地域が「準工業地域」だった場合は契約前に閲覧することをオススメします。
区分マンションは「管理状況」を必ず精査しよう
区分マンションの購入を検討する際、なにを基準に判断しますか? 駅からの距離? 綺麗な内装? あるいはバルコニーからの眺望でしょうか?
もちろんそれらも大切ですが、区分マンションを選ぶ際にまず確認したいのは「管理状況」です。管理組合の有無はもちろん、管理実務はマンション管理専門業者への委託か、それとも自主管理か、管理費・修繕積立金は健全に運用されているか…などについて調べておく必要があります。
事例として現在販売中の、駅徒歩5分、9階建てマンションの最上階メゾネットタイプ住戸のケースを見てみましょう。
総戸数は18戸と少なく、管理費・修繕積立金は少々割高です。とはいえ、室内は水回りを含めてフルリフォームされていて新築同様。すぐに契約が成立しました。しかし、買主が引き渡しを受けて入居すると、いろいろな不具合が発覚します。まずはバルコニーの浸水です。これは共用部分にあたるため、買主は管理組合の理事長に相談を持ちかけました。
理事長はこの近辺の元地主で、マンション建設時は一棟全室を所有していました。しかし諸般の事情から、一室また一室と売却し、残ったのはワンルーム一室で、現在はそこに暮らしています。理事長は「ほかの理事と相談する」と言ったきり、数週間返事をくれません。
その間にもバスルームの壁の膨張という、新たな不具合が発生しました。
管理組合があてにならないので、買主自らリフォーム業者を手配し下見をしてもらったところ、「屋上か外壁から内壁への浸水があり、長い間水が抜けない状態になっていたため、溜まった水が室内(バスルーム)壁を膨らませたものと思われる」とのことでした。
このマンションは築30年ですが、大規模修繕の履歴などはありません。理事長に聞くと、「修繕が必要な箇所は気づいたときに適宜工事をしてきた」ということで、屋上や外壁の全面防水・塗装は行っていないようです。そんな管理状況では浸水や壁の膨張が起きるのも当然です。
自主管理のマンションの多くは、1980年代から90年代のバブル経済期に建てられました。個人の地主が地元の工務店などから「今後高騰が予想される固定資産税の節税対策に」と勧められ、定期的な点検管理や長期修繕計画の知識もないまま強引にマンションオーナーにさせられるといったケースも頻出していました。こういった物件は現在も大手ブランドマンションと肩を並べて売買されており、一般の人が見極めるのは簡単ではありません。
見分ける手掛かりとなるのは、まず、バブル期築であること、管理形態が自主管理であること、総戸数が少ないこと、そして土地所有権が敷地権でない(建物と土地の所有権が別)ことなどが挙げられます。これらに該当しないか精査することで、該当の物件を避けることが可能です。