名古屋:まとまった新規供給を控え空室率は上昇傾向へ
2019年Q4に過去最低値を記録したオールグレード空室率は、COVID-19感染拡大が本格化する前の2020年Q1に早くも上昇に転じた。2019年後半から製造業を中心に大型区画に対するニーズがやや弱含み、まとまった空室の消化に時間を要する事例がみられ始めていたためだ。
Q2以降は、リモートワーク導入によるオフィス面積の見直しや、コスト削減を目的とした一部解約や縮小移転が増加した。ウイルス感染対策として「三密」回避のための分室や、建て替えに伴う立ち退き移転ニーズもみられたが、需要は総じて弱含んだ。
向こう3年間の新規供給は3.8万坪、このうちグレードAは1万坪が予定されている(FIGURE8)。
2020年Q2以降、新規開設や拡張移転のニーズが弱含みになったとともに、オフィス戦略の見直しに伴う一部解約や縮小などの動きが出ており、今後も同様の動きは続くとみられる。
このため、新築ビルの中にはまとまった空室を抱えて竣工するものも出てこよう。また、新築ビルへの移転に伴う二次空室の発生も予想される。競争力の劣る既存ビルの場合は、後継テナント決定までに時間を要し、空室期間が長引く可能性がある。
以上のことから、グレードAの空室率は2023年Q4時点で3.8%と、対2020年Q4比で2.6ポイント上昇、賃料は緩やかな下落傾向となり同-1.1%の27,750円/坪を予想する(FIGURE9)。
グレードBの2021年の新規供給は1.7万坪が予定されており、2008年の2.3万坪に次ぐ規模となる。グレードBの空室率は2022年後半から2023年後半にかけて4%台が続くものの、2023年Q4には3.8%にやや低下する見通し。
需給緩和が見込まれるため、競争力が劣るビルでは、テナント確保のために募集賃料の引き下げを加速させる可能性がある。そのためグレードBの賃料は同-2.5%の13,800円/坪と、グレードAに比べやや調整が進むと予想する。
地方都市:多くの都市で賃料は2022年に底打つと予想
2020年、地方都市のオフィスマーケットは2019年に続き需給タイトな状況でスタートした。2020年Q1の空室率は10都市中5都市で1%未満、賃料は10都市中5都市で2003年以来の最高値を更新した。
しかし、COVID-19感染拡大が本格化したQ2はリーシングが停滞、7都市で空室率が上昇した。Q3以降は、コールセンターなどの業態を中心に一部で需要の回復がみられた。しかし、総じて需要はコロナ禍以前の水準には戻らず、2020年Q3は全7都市で空室率が上昇し、5都市で賃料が下落に転じた。
ただし、三大都市に比べ、地方都市マーケットにおけるコロナ禍の影響はこれまでのところ限定的である。これは、①三大都市に比べて人口密度が低く、通勤事情が異なり、オフィスに出勤するワーカーの割合が相対的に高いこと、②三大都市と比べて坪単価が低く、かつ使用面積が相対的に小さい支店が多いためオフィスコストが嵩みにくいこと、などが理由として挙げられる。
2021年は未だ経済はコロナ禍以前の水準には戻らないとみられる。そのため地方都市のオフィス需要は引き続き弱含み、空室率は上昇、賃料は下落傾向が続くと予想する。
しかし、経済の回復とともにオフィス需要も徐々に回復していくとみられ、2022年中には多くの都市で空室率は低下傾向に転じ、やや遅行して賃料も底を打つと予想する。ただし、賃料上昇のペースは今後の新規供給量に左右されよう。
横浜、金沢、福岡の3都市は、現在のマーケット規模に対して、向こう3年間の新規供給の割合が他都市に比べて高い(FIGURE10)。
しかし横浜は、2021年竣工ビルの多くですでにテナントが内定しており、2022年には新規供給の予定がない。このため、横浜の想定成約賃料は他都市よりも早い2022年前半には上昇に転じると予想する。
関連記事:ジャパンメジャーレポート - 不動産マーケットアウトルック2021 2021年1月
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