「嫌だった、辛かった」と語る…医療事務スタッフの大奮闘

コロナ禍で「医療崩壊」が叫ばれる今。スタッフ不足や患者受け入れの困難化、病院の経営悪化など、医療の提供を脅かす問題が尽きることはない。近い将来、病院の統廃合や運営の引継ぎが相次ぐだろう。病院をうまく回していくには、どうすればよいのか。医療の現状に大きな注目が集まるなか、現場からの声を聞いた。

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今後「医療法人の運営交代・統廃合」が急増の見込み

医療体制のひっ迫を受けて、緊急事態宣言の延長が決まりました。現場でのコロナ対応はもう当たり前に実践されるようになりましたが、医療従事者の負担が大きいことは変わりありません。

 

原因の1つは、スタッフの手配が難しいことです。濃厚接触者として自宅待機となったり、託児所が使えなくなりシフトが減ったり離職せざるを得なかったりして、スタッフの人員体制が縮小しているのです。

 

こういったスタッフ手配の問題があると、受け入れ可能な患者数が少なくなります。これは患者側だけでなく病院側にとっても大きな問題です。実際、経営が厳しくなっている医療機関が出てきました。今後、コロナの影響により運営主体が変わる医療機関や、統廃合が進む事例が予想されます。

 

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コロナ対応にせよ経営改善にせよ、重要なのは「現場に入り込むこと」です。これがどういうことなのか、私たちのグループで病院の運営を引き継いだ事例を使って説明しましょう。

事務スタッフが現場に来て…運営改善の意外なきっかけ

筆者が勤務するグループは、もともと1つのクリニックからスタートしました。現在は3つの病院の他、約30の施設を運営しています。

 

3つの病院は、新しく作ったというわけではありません。他の医療機関の運営を引き継いできたのです。こういったケースでは、経営がうまくいっておらず、「なんとか引受け先がないか」と相談を受けるのが実情です。

 

うち1つは、企業立だった病院です。5年ほど前に、企業側の「事業の選択と集中」により、運営を引き受けることになりました。昭和12年に企業立診療所としてスタートし、昭和13年に拡張し病院として運営されてきたという、歴史ある施設です。

 

昭和45年には当時県内で数少なかった透析装置を導入するなど、透析を中心とした診療を担う地域の中堅医療機関でした。現在も変わらず透析を中心とした診療を継続しており、一般病床32床・透析ベッド31床を有しています。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

運営を引き継いでからしばらくは、病床の稼働率が上向かないなど、決してよいとは言えない経営状況が続きました。そのようななか、1人の事務スタッフが医療現場に入り込むようになりました。病院の状況が大きく変わったのは、このスタッフによる力が大きいものと思っています。

「外から指図するだけの本部」に医療現場の不信感

このスタッフが入るまで、グループ本部からの働きかけは外からのものばかりで、なかなか運営状況は変わりませんでした。本部は現状分析をし、効果的と思われる改善策を提示するところまでに留まり、そこから先の施策運用は現場に任せきりとなっていました。

 

苦楽をともにするような人材も送り込まれません。そのためか現場にはグループ本部への信頼感がなく、現場のスタッフにとって腹落ちする進め方をできていませんでした。

 

運営が引き継がれるまで、事務長は企業本体から交代で1〜2年間配属されるだけの役職だったようです。渋々配置されるということもあったのでしょう。そういった環境では現状維持が目的となり、状況に合わせて病院を変えていこうというモチベーションは生まれにくかったと思われます。一方、医療スタッフは数年交代のルーティンなどとは関係なく診療を担うものです。

 

こういった意識の食い違いがあることから、両者がフラットに話すことなどできなかったのだろうということは想像にかたくありません。

フォロー体制などなく…運転手ドタキャン事件の顛末

そのとき現場に入り込んだ事務スタッフも、初めのうちは受け入れられていないと感じたようです。当時を振り返って「嫌だった、辛かった」と語ります。しかし様々な問題に対して、自ら前に出て当たっていくうちに少しずつ、院長をはじめ院内スタッフから信頼されるようになりました。

 

この事務スタッフが辛かったと語る事例の1つとして、透析患者さんの送迎があります。その病院では、透析患者さんの送迎を2便運行していました。しかしある朝突然、担当の送迎運転手から「今日は送迎に行けない」という連絡が入ったのです。

 

遠方まで迎えに行くため出発時間は早朝で、日さえ昇らない3時台の出来事でした。そのスタッフは配属から間もない時期で、今から迎えに行く患者さんは誰なのか、どこに住んでいるのかという情報どころか、車椅子の固定方法など送迎車両の使い方も覚えきれていない状態でした。

 

最終的には何とかもう1人の送迎運転手と話がつき、患者さんの自宅に自身が向かうことで解決したようです。

 

当時、送迎2便に対して運転手は2名しかいないという状況で、フォロー体制などは用意されていませんでした。この事件をきっかけに運転手は増員され、無理なく送迎便を走らせられるようになりました。

「真正面から問題解決に挑む姿」が医療スタッフを感化

また、その事務スタッフは、問題のある職員の対応や、方針の合わない医師との話し合いも大変だったと振り返ります。

 

「部門に1人しかいないスタッフに、看過できない問題点があった。ところが話し合って解決しようとすると『辞める』と言われてしまう。悩んだが腹を括り、その人には辞めてもらうことにして、わずかな猶予期間で何とかしようと決めた。」

 

しかし、結果的によい縁に恵まれたと述べます。数多くのトラブルを経たことで、医療スタッフから「矢面に立って大変な思いをしている、これ以上を迷惑はかけられない、フォローしたい」と話しかけられるようになったようです。

 

こうして事務スタッフと医療スタッフの信頼関係が築かれたことで、ようやく患者さん獲得の具体的な取り組みが進み始めました。

コロナ対応も経営改善も「現場に入り込む」ことが重要

医師をはじめとした医療スタッフは、現場を守ること、目の前の患者さんに最善の医療を提供することに主軸を置いています。事務スタッフを含む経営側は、病院の提供する医療がニーズに合致しているかどうかを客観的に考えます。

 

それぞれの主張が噛み合わないことは珍しくありません。それを解決する際に、ぶつかり合いになってうまくいかなくなるか、お互いに話し合いながらよい方向に変化していけるかは信頼関係次第です。信頼を得られる事務がいるかどうかが重要です。

 

いくら効果的な解決策があっても、診療を行うのは現場の医師や看護師といった医療スタッフです。経営的視点、本部からの意向をただ押し通そうとするだけでは、うまくいきようがありません。

 

これはコロナ対応においても同様です。今後まだまだ続くコロナ対応や病院の運営改善にあたり、現場に入り込むことの意味がわかる事例です。

 

 

 

杉山 宗志
ときわ会グループ

 

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ときわ会グループ 

静岡県伊豆出身。静岡県立韮山高等学校、東京大学工学部建築学科卒業、同大学院工学系研究科建築学専攻修士課程終了。東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラム修了。東京大学在学中は運動会剣道部に所属。現在は福島県いわき市を中心に医療、介護、教育を軸に事業展開する『ときわ会』にて勤務。

著者紹介

医療と社会の間に生じる諸問題をガバナンスという視点から研究し、その成果を社会に発信していく特定非営利活動法人「医療ガバナンス研究所」による学会。「官でない公」を体現する次世代の研究者の育成を目的とし、全国の医療従事者が会員として名を連ねている。

著者紹介

連載医療従事者が本音で語る「日本社会」の現状~GGO For Doctor

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