年々人気が高まる「医学部」。倍率も偏差値も上昇して受験戦争は熾烈を極めている。入試に向けては通常、高校2年秋頃から対策を始める人が多い。しかし医学部受験の世界では、多い順に「小学生から」「中1から」「高1から」と随分早期だ。そんななか、東京大学医学部に通う筆者は「高3のギリギリまで、他の活動をしていた」という。いったいどのような勉強をして合格に至ったのか? 筆者が「個人的にしていたこと」を紹介する。

しんどい受験を乗り切った「これから追いつく」の精神

私は東京大学医学部の5年生だ。自分の力というよりは環境のおかげで合格できた側面も非常に強いのだが、自分なりに工夫していた点、そして大学入学以降についても紹介したいと思う。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

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私は、ディベート部と生徒会を中心に、高3の夏前まで課外活動を行っていた。高校1年生で高校生の模擬国連大会に参加し、2年生から3年生にかけて生徒会長を務めた。他に、高1・高2で日本語のディベート大会、高2で英語ディベート大会に参加した。生徒会企画としては、阪神淡路大震災20周年にあたり、最寄駅での写真展示と先生方へのインタビューを行った。

 

受験勉強については正直そんなに早くから準備をできていた訳ではなかったが、定期考査である程度の成績をとることを条件に親に放任してもらえたおかげで、様々なことに取り組んで見聞を広げることができた。そして生徒会長の任期が終わったタイミングを機にギアを切り替えて勉強時間を増やした。

 

高2までの、自分の自由を守るために成績を死守するというシステムは自分の場合には有効に機能していた。この形を採用すると、高3の一年間も気が楽である。「他のことをやっていた分今遅れていても仕方がない、これから追いつく」と思い続けて勉強を進めるのは、先にリードして守りに入るより楽だと思う。

「本番の時間配分」を意識して、短時間ずつ勉強

これは小学生の頃から実践しているが、全体で90分や120分の試験であっても、一問あたりにかけられる時間は多くて15分や20分である。

 

特に、中学受験の問題だと、たとえば算数の問題は5分程度が目安になる。であれば、わざわざ休日に気合を入れて長い尺を取らずとも、家を出る前の10分、15分で本番レベルの緊張感を持って一問を解き切る時間を作ることができる。

 

私の場合、中学校・高校は大津から神戸まで片道1時間30分の電車通学であった。ちなみに電車に乗っている間はひたすら寝るのみで、よく寝過ごしていた。

 

高3の秋~冬ごろは、まず混雑を避けるために始発に近い時間帯で家を出て、始業の1時間半ほど前に学校についてから、東大過去問の物理一題(25分目安)、古典一題(15~20分目安)を解いたりした。

 

とりあえず解くときには緊張感を持てるような時間設定、環境を整えることである。ダラダラと解くことほどもったいないことはない。これは基本的に自分で探し出していくしかない。

「一冊の問題集を徹底的にやり抜く」ことの絶大効果

人によっては多くの受験参考書を買い込んで、色々見てみる形で勉強を進めている人もいると思う。ただ、自分が受験した頃であれば物理の『難系統の問題集』(以下、難系。服部嗣雄著、ニュートンプレス)や化学の『化学の新演習』(卜部吉庸著、三省堂)など、特に理系教科には代表的な問題集がいくつか存在していた。

 

学校や塾・予備校で与えられたルーチンをこなす習慣はもちろん必要だが、それとは別に「この一冊をやり切った」という自信は終盤で効いてくる。難系に関してはすべて問題をコピーし、ノートの見開き2ページごとに一問貼り、時間制限を設けて解いて行った。解けなかった場合はなぜ解けなかったか分析してすべて書き込み、自分の「難系ノート」(確か5、6冊ほどに及んだ)を作成した。

卒業後の明暗を分ける「チャンスをモノにする」生き方

東大生に関する記事ではよく、「使い物にならない」「勉強はできても…」というような社会においては活躍できていない人が一定数いることが書き立てられている。

 

確かに、高校までとは求められることが違うように感じる。高校まで、特に東大受験などの場合はバランスよくすべてにおいて平均以上にキープすることを目指すのが重要である。

 

一方で、大学以降に必要なのは、ニッチな範囲であっても「ここに関しては周りの先輩に負けないほど詳しい」という専門性である。それによって自分個人がキャラクターとして認知され、先輩や先生方からいろいろな機会をもらえることもある。故に、大学以降に大事なことは、目の前のチャンスを素早く掴み、集中的に自分の時間を使ったり何かしら形に残したりすることだ。

 

私は、医療ガバナンス研究所でインターンをするなかで、たまたまオレンジホームケアクリニックという在宅医療のクリニックで研究プロジェクトに関わるチャンスをいただき、昨年一本の原著論文を書き上げることができた。在宅医療を受けている患者さんがどういう状況で救急車による搬送を依頼しているかということをまとめた研究である。

 

あるいは、株式会社THDの方と出会ったことで、東京大学総合博物館分館にて、医学部教授の肖像に関するギャラリートークをする機会をいただいた。また、関西の医学生を中心としていたinochi学生プロジェクトに参加し、関東版の立ち上げに関わる機会をいただいた。

 

もともとそこまで強い興味があったわけではないが、いざ論文を書くこと、ギャラリートークを行うこと、プログラムを実施することを目標にすると文献のリサーチ等々深く調べなければならない。そのうち、だんだんと面白くなってくる。このサイクルをできる限り高い密度で多く繰り返すことが大事だと思う。

 

ただ一方で、最初から一つのテーマに絡めて6年間を計画的に使い、将来に向けてきっちりと必要な能力を養っている同期もいる。将来が不確実な時代だが、進むべき道がしっかりと定まっている人は無闇にチャンスに飛びつく必要もないだろう。

何に時間を費やすのか?常に持つべき「生産性」の思考

医学部の場合、特に試験が多いため、試験でできる限りよい点数を目標にすると無限に時間を使うことができてしまう。

 

受かりさえすればよいのか、それ以上の何かを目指すのかを事前にしっかり決めること、そしてそれに応じて直前まで勉強以外に費やすことで、自然と勉強の濃さと自由時間を手に入れることができる。使った時間に対して自分が得られるものという「生産性」の考え方は常に意識していきたい。

 

特に、昨年大学に入学した学年は、当初から全面オンライン授業のため手の抜き方がわからず、例年より通常の授業に時間をより費やしている人が多いという。しかし、自分の時間を何に費やすかは周りの人と合わせるのではなく、自分自身で決められるのが大学生である。難しい状況であると思うが、切り開いていってほしい。

 

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小坂 真琴

東京大学 医学部 5年生(※2021年2月時点)

 

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