ある日突然、老親が緊急搬送で入院という事態が起こります。介護は毎日のことなので、使命感だけでは長続きはしません。10年以上、仕事をしながら父母の遠距離介護を続けてきた在宅介護のエキスパートは、「介護する人が幸せでなければ、介護される人も幸せにはならない」と訴えます。入院や介護に備え、知っておきたい制度やお金の話から、役立つ情報、具体的なケア方法までを明らかにします。本連載は渋澤和世著『親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…』(プレジデント社)から抜粋し、再編集したものです。

介護保険は申請主義で自分から動かないとダメ

介護保険制度とは

 

現在の日本は核家族化が進み、高齢者単独や高齢夫婦のみの世帯が増加し、一昔前とは家族形態が変わってきています。そこへ認知症患者の増加、介護の長期化・重度化が進み「介護」は老後の大きな不安材料となっています。その問題を社会全体で支えようと創設されたのが、2000年4月にスタートした介護保険制度です。40歳になると医療保険料と一緒に介護保険料が徴収され、65歳以上になると年金から天引きされるか納付書で個別に納付します。

 

(画像はイメージです/PIXTA)
(画像はイメージです/PIXTA)

 

40歳から保険料は支払っているのですが、実際に介護保険サービスを利用できるのは、65歳以上の介護や支援が必要になった人です。この年齢ならば介護が必要となった原因は問われません。40歳以上64歳までの人は、医療保険加入者であること、16種類の特定疾病が原因で介護や支援が必要な状態になるという条件があります。例えば、62歳で交通事故が原因で介護が必要となっても介護保険は利用できないのです。

 

 

医療保険と介護保険

 

大きな違いは、介護保険は申請主義で自分から動かないと何も始まらないということです。医療保険は保険証を持って病院に行けば、その日のうちに1〜3割の負担額で診察や薬の処方を受けることができます。介護保険は65歳になると介護保険証が届きますが、使うためには利用申請をして身体の状態を調査され、更に「要支援・要介護認定」という許可を受ける必要があります。

 

届いた介護保険証はこの手続きを踏まないと単なる紙切れです。そして、認定を受けた後、介護保険のサービスを利用するには、ケアマネージャーなどが作成するケアプランが必要で、受けたいサービスを選択し提供事業者と契約を結ぶことで利用できるようになります。お金も医療保険は病気が治れば支出は終わりますが、介護は、悪化することが多いので費用負担が一生続く可能性が非常に高くなります。

 

※混乱や理解低下など、認知症発症の有無などで大きく異なる場合があります。
※混乱や理解低下など、認知症発症の有無などで大きく異なる場合があります。

退院後に介護保険サービスを
利用したい

 

入院中は医療保険が適用されていますので、介護保険の利用は退院後からとなります。その場合でも、入院中に介護保険の利用申請を行うことは可能です。結果が出るのは1か月程度を目安として早めに行動しましょう。結果が出る前に退院の予定があり介護サービスをすぐに使いたいときは、介護保険の利用申請時にその希望を必ず伝えてください。

 

申請は市区町村の介護保険窓口で受け付けています。申請者は親本人のほか、家族、ケアマネージャー、地域包括支援センター職員でも可能です。申請すると訪問調査が入り、その後、結果が要支援1~2、要介護1~5のほか、非該当という8つの区分のいずれかで通知されます。訪調査を病院で受けると介護度が高くなる傾向にあります。

 

ケガや病気で要介護状態に、
入院中にするべきこと

 

① 入院中に介護認定を受け、帰宅後の環境を整備する(福祉用具の選定など)
② 介護サービスの情報収集を行う。訪問介護やデイサービスなども含め、必要なサービスを検討する。場合により配食サービスなども検討する。
③ 介護施設も検討する。退院後すぐの入居は難しいかもしれないが、身体状況、金銭状態などから候補をあげておく
④ 在宅の場合、在宅療養支援診療所や訪問診療・往診対応の在宅医療の情報収集を行う
⑤親やきょうだい、親類と今後について話し合う
⑥退院後の親の状態を医師、看護師に確認する

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親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…

親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…

渋澤 和世

プレジデント社

高齢化が進む日本では現在、介護ストレスによる介護疲れが大きな問題だ。そこで本書では、仕事や育児との両立を前提に、「完璧な介護」ではなく「頑張りすぎない介護」を提案する。 正社員としてフルタイムで働きながら、10年…

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