ある日突然、老親が緊急搬送で入院という事態が起こります。介護は毎日のことなので、使命感だけでは長続きはしません。10年以上、仕事をしながら父母の遠距離介護を続けてきた在宅介護のエキスパートは、「介護する人が幸せでなければ、介護される人も幸せにはならない」と訴えます。入院や介護に備え、知っておきたい制度やお金の話から、役立つ情報、具体的なケア方法までを明らかにします。本連載は渋澤和世著『親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…』(プレジデント社)から抜粋し、再編集したものです。

「1回の入院で22万円」の自己負担が必要

入院に必要な費用はどのくらい

 

親が病気やケガで入院した場合、どのくらいの費用がかかるのでしょうか。「平成28年度生活保障に関する調査」(公益財団法人生命保険文化センター調べ)では、自己負担費用額の平均は、22.1万円です。最も多いのが10~20万円未満で全体の約40%、20万以上も35%を超えています。

 

治療方法や入院日数で変わってきますが、「1回の入院で22万はかかる」との目安にはなります。請求書は、ほとんどの病院で月末締めの翌月支払い、退院時はその日までが清算され、退院日含め、数日以内に入金ということになります。ご参考までに、母が肺炎で2か月間入院したときは、入院時預かり金(保証金)10万、1か月目12万、2か月目は10万を窓口に支払いました。まとまったお金が必要になります。

 

 

公的医療保険でカバーされる範囲
(1〜3割負担の範囲)

 

入院基本料(1日当たりの基本利用金:診察、看護、室料、寝具代など)、治療費(投薬、点滴、注射、手術、リハビリ、各種検査など)は医療保険の自己負担割合の適用があります。食事療養に関しては、治療の一環として医療保険でまかなわれる部分と自己負担部分があります。医療費の自己負担割合は年齢と所得によって違いがあり、小学校入学から69歳までは3割負担、70歳以上で2割、75歳以上では1割となります。ただし70歳、75歳以上でも現役並みの所得があると3割自己負担となります。

 

公的医療保険でカバーされない範囲
(全額自己負担の範囲)

 

先進医療と自ら希望して個室などに入った場合の差額ベッド代は範囲外です。個室といっても1人部屋のみでなく、4人以下で必要な広さを備えた特別室であれば差額ベッド代が発生します。この他、必要に応じて、タオルや病衣、オムツなどのレンタル費用や、テレビや本などの娯楽費、診断書や入院証明書などの文書費用もかかります。家族が病院に向かう交通費なども距離や日数により、かなりの支出になることもあります。

 

高額療養費制度で
費用の負担が軽くなる

 

高額療養費制度とは、同じ月(1日から月末)の間にかかった医療費の負担金が高額になった場合、定められた上限額(自己負担限度額)を超えて支払った額が払い戻されるという制度です。上限額は年齢や所得に応じて定められています。この制度の注意点は、同じ月ということです。月の中旬から次月の中旬の入院だと、日数不足で対象外、月初入院、月末退院ならば対象ということがあります。入院期間は同じ1か月であるのに不公平感があるかもしれません。

 

高額療養費制度を意識して受診を月初めまで引き延ばすのはよくありません。やはり、病気は一刻も早い受診の方が良いのです。さらに、両親が同じ公的医療保険に加入しており同月に医療費が生じたときは世帯単位で合算ができる制度や、多数回該当といって過去12か月以内に3回以上高額療養費を受けた場合、4回目から自己負担限度額が下がるなど、国民の負担額を下げるための仕組みもあります。

 

高額医療費貸付制度、
高額療養費受領委任払いもある

 

当面の支払いが困難なとき、無利子で高額療養費見込額の8割を貸し付ける高額医療費貸付制度や医療機関への支払いが自己負担限度額までとなる高額療養費受領委任払いがあります。市区町村によって採用に基準があるようですので、窓口に確認をしてください。

 

渋澤 和世
在宅介護エキスパート協会 代表

 

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