ある日突然、老親が緊急搬送で入院という事態が起こります。介護は毎日のことなので、使命感だけでは長続きはしません。10年以上、仕事をしながら父母の遠距離介護を続けてきた在宅介護のエキスパートは、「介護する人が幸せでなければ、介護される人も幸せにはならない」と訴えます。入院や介護に備え、知っておきたい制度やお金の話から、役立つ情報、具体的なケア方法までを明らかにします。本連載は渋澤和世著『入院・介護・認知症…親が倒れたら、まず読む本』(プレジデント社)から抜粋し、再編集したものです。

付き添いは病院によって対応は異なる

入院基本料に含まれている看護料

 

入院基本料には、寝具類を含む療養環境の提供、看護師の確保、医学的管理などの費用が含まれており、基本的に病院から家族に対して付き添いの強制はできません。母が認知症初期の頃は、点滴の管を触ったり、同室の人を夜間起こしたりの問題行動があったので、個室に移動になった上、家族の寝泊まりを求められました。

 

このときは杖使用で多少身体に弱りが見えても、父が対応できる範囲でしたので助かりましたが、対応不可能だったら自分で看つつ、足りない部分は親族にサポートをお願いしていたと思います。

 

付き添いに関しては、手術直後の面会を断られる病院もあり、対応は病院によって異なるというのが現状です。付き添いは、できないときの問題ばかりでなく、したいという状況もあります。危篤や容態が急変したときなどは、付き添いをしたいものです。自分が一緒にいたい、いれるときは、個室への移動、付き添いを申し出ることができますので相談してみましょう。

 

付き添いは、手術直後の面会を断られる病院もあり、対応は病院によって異なるという。(※写真はイメージです/PIXTA)
付き添いは、手術直後の面会を断られる病院もあり、対応は病院によって異なるという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

身体拘束の同意書を求められる

 

家族が付き添いできない場合、身体拘束同意書を求められることがあります。夜間の立ち上がり防止のためベッドに縛る、管を抜かないためミトンをつける、などです。病院は治療の場であるため、短時間拘束をしてでも治療を進めていくという考えなのです(同意書がないと高齢者虐待になる)。病院では問題行動の多い患者に睡眠剤を服用してもらうケースも多々あります。

 

対照的に、介護施設は生活の場なので、柵でベッドを囲むことも身体拘束にあたるため比較的自立している入居者の夜間徘徊も多く見られます。夜勤者も人間です。時間でオムツ交換などの仕事があるため目が行き届かなくなりますが、そのときに事故が起こると施設に責任が発生してしまいます。特に人手の少ない夜間対応の限界が問題となっています。

 

奥の手は有償ボランティア

 

病院に入院中は医療保険が適用されているので介護保険のサービスは利用できません。入院中どうしても人手が必要で、かつ対応できる親族もいないときは、奥の手として有償ボランティアがあります。料金も決して安くはありませんが、困ったときは頼りになる存在です。市区町村の社会福祉協議会で登録先が確認できますので問い合わせてみましょう。また、介護保険外ですが一部訪問介護サービス事業所で病院付き添いサービスに対応していますので併せて確認してみましょう。

 

入院中の洗濯どうする?

 

下着やタオルの洗濯も頭を悩ませます。週に2回通えれば家族が対応できる範囲と思いますが、遠距離だと運搬も重労働です。もし、病衣・タオル類・紙オムツ・オシリ拭きなど必要なものだけをレンタルできるサービスがあれば、1日1000円前後と安くはありませんが、入院日数によっては検討してみてください。下着は家族が対応することになりますが、家に持ち帰るか、病院のランドリーを利用するか、病院内のクリーニング業者に頼むという手もあります。女性なら100円ショップで5枚入りの不織布の使い捨てパンツを利用するのも一案です。

 

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親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…

親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…

渋澤 和世

プレジデント社

高齢化が進む日本では現在、介護ストレスによる介護疲れが大きな問題だ。そこで本書では、仕事や育児との両立を前提に、「完璧な介護」ではなく「頑張りすぎない介護」を提案する。 正社員としてフルタイムで働きながら、10年…

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