ある日突然、老親が緊急搬送で入院という事態が起こります。介護は毎日のことなので、使命感だけでは長続きはしません。10年以上、仕事をしながら父母の遠距離介護を続けてきた在宅介護のエキスパートは、「介護する人が幸せでなければ、介護される人も幸せにはならない」と訴えます。入院や介護に備え、知っておきたい制度やお金の話から、役立つ情報、具体的なケア方法までを明らかにします。本連載は渋澤和世著『親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…』(プレジデント社)から抜粋し、再編集したものです。

入院で筋力が低下し自立歩行が困難に

入院のたびに進行する認知症

 

認知症という病気で入院することはありませんが、骨折や肺炎で入院すると認知症が一気に進むことがあります。母も入院のたびに、要介護度が上がりました。環境が変わるからと言われますが、実際のところよくわかりません。ただ、進行するという事実は本当です。

 

認知症の人でも家は居心地が良く安心するようなのですが、病院だと医師や看護師も知らない人、トイレや食事もいつもと違うし、環境不適合が原因で進行をしているように思うのです。なぜなら、退院後は一気に進んだように思えても、数か月後、少しだけですが良い方向に戻るからです。

 

 

身体機能の低下は突然やってくる

 

誤嚥性肺炎で入院すると、一定期間、食事制限があり食形態も常食だったのに、お粥やミキサー食に変わる。圧迫骨折で入院したら、ほぼベッド上で過ごすうちに筋力が低下し自立歩行が困難になり、排せつもオムツになりベッド上で行われる。病気やケガの治療は終わっても、いざ退院のときに食事介助・排せつ介助・歩行介助など、介護が突然必要になることがあります。そんなとき、家族はとても不安になります。

 

退院の目途がたつと安心と同時にもう少し先でも、と思うかもしれません。母が大腿骨頸部骨折で手術した際、「昼間は看護師室で座らされているだけ、病院は感染の心配もある。長くいるより家に帰って刺激を受けた方が良い」と、もう少し病院においてほしいと私が思っていた矢先、主治医よりアドバイスがありました。

「せん妄」いないものが見える幻覚症状がでることも

知的機能の低下も、もれなくついてくる

 

入院して認知症が発症するというより、入院が原因で認知症が進み、退院後診断された、ということはよくあります。もともと、認知症の兆候があったのではないでしょうか。入院という他人任せの受動的な生活に影響を受けるのかもしれません。昼夜逆転、弄便(便をさわる)など、問題行動が出る場合もありますので、入院すると、知的機能の低下のリスクがあるということを先に理解しておきましょう。

 

入院すると急に起こる、せん妄症状

 

せん妄という症状に当初とても驚きました。手術翌日の面会の際、医療室から戻ったときの母の表情と態度が明らかに違うのです。目つきがとにかくおかしい。目を見開き焦点が合っていない。にもかかわらず怖い顔をして無言なのです。言葉はなく意識がとんでいるような感じです。環境が変わって特に手術をして麻酔を使うと出ることが多いとのこと。点滴の針を抜いたり、夜間騒いだり、いないものが見えるなどの幻覚の症状が出てくることもあります。

 

母は認知症なので、そうではない方よりも、この入院せん妄というのが出現しやすいようでした。心配したのですが、この症状は退院後、1週間もすると消えていきました。自分の居場所に戻れば落ち着くので、最初は不安になりますが、少し様子を見ても大丈夫です。

 

 

渋澤 和世
在宅介護エキスパート協会 代表

 

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親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…

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渋澤 和世

プレジデント社

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