ある日突然、老親が緊急搬送で入院という事態が起こります。介護は毎日のことなので、使命感だけでは長続きはしません。10年以上、仕事をしながら父母の遠距離介護を続けてきた在宅介護のエキスパートは、「介護する人が幸せでなければ、介護される人も幸せにはならない」と訴えます。入院や介護に備え、知っておきたい制度やお金の話から、役立つ情報、具体的なケア方法までを明らかにします。本連載は渋澤和世著『親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…』(プレジデント社)から抜粋し、再編集したものです。

老親は主治医か子どもの言いなりになる

入院診療計画書で
入院の全体感を把握する

 

入院日から7日以内に入院診療計画を患者に説明することが病院に義務付けられています。記載項目は、患者氏名、病棟、主治医、入院の原因となった傷病名及び主要な症状、入院中の検査、手術、投薬その他の治療(入院中の看護及び栄養管理を含む)、推定入院期間などです。全体を網羅して把握できる書類というイメージです。

 

親は治療の判断を自分の意思だけで決めることが不安で医師がその治療法を勧めるならと安易に同意書にサインするか、子に「お前が決めてくれ、それに従うから」と丸投げをする場合があります。入院診療計画書から病名がわかると、多くの人はインターネットで事の重大さや治療法を調べることでしょう。

 

すべて鵜呑みにすることもないのですが、その病気の専門医の話や、治療実績のある医師や病院のインタビュー記事や紹介記事があったら目を通しておくと良いと思います。

 

(画像はイメージです/PIXTA)
(画像はイメージです/PIXTA)

 

クリニカルパスは
多職種連携が一目瞭然

 

経過ごと(手術日、手術後1日目、2日目…)に細かく、検査、食事内容、薬、安静度、リハビリなどの検査や治療の予定とタイムスケジュールが示されたものです。医師、看護師のほか、治療に関わる様々な職種(薬剤師、管理栄養士、理学療法士など)の連携によって作成されています。

 

現在、多職種連携が注目されていますが、クリニカルパスから親の治療にそれぞれの専門職がどう関与しているのかを確認することができます。作成は任意であるため、すべての病院で対応しているものではないことに注意しましょう。

 

 

 

インフォームドコンセントは必ず同席を
(インフォーム・情報提供 コンセント・同意)

 

医師には、「医療の目的や方法、予想結果や危険性などの説明を行い患者の理解を得るように努めなければならない」との努力義務があります。内容は、検査や治療および手術の内容と目的、手術後の注意点、治療効果、麻酔、輸血、合併症、副作用などで、説明に納得した患者は、同意書にサインをします。

 

親本人に意識がない場合や判断能力が欠ける場合、家族が同意を代行します。同席を求められなくても、親世代は医師に従順であり、理解せずサインすることがあるので同席が安心です。疑問がある場合は遠慮なく、他の選択肢はあるのかを念のため、聞いてみるのも良いでしょう。

 

心肺蘇生法を行わないことに関する
同意書及び延命処置を

行わないことについての要望書

 

この書類は名前の通り、病状が進行し、心肺停止状態となった場合に、心肺蘇生法を行わないことに同意する。また延命処置として要望するもの、しないものを意思表明するものです。この書類を渡されると、「そんなに危険な状態なのか」と慌ててしまうかもしれませんが、高齢者であれば誰でも記載するものと思ってください。

 

心臓マッサージや昇圧薬など、比較的選びやすいものから、化学療法(癌)、経管栄養(胃ろう)など、すぐには決めにくい項目もあります。人工呼吸器をつけると退院ができなくなりますので、よく検討する必要があります。ただし一度提出しても、気が変わったら内容の変更は可能です。

 

セカンドオピニオンは
主治医を変更することではない

 

他の治療法などを検討したい場合は同意書にサインせず、セカンドオピニオンを検討します。セカンドオピニオンとは、親の病状や治療方針、方法などについて他の医師の意見を求めることです。ただし、主治医がセカンドオピニオンに承諾しない、単なる不満や苦情は受けつけてもらえません。

 

主治医の承諾が得られたら、セカンドオピニオンを受け入れる病院を探しましょう。相談のみで新たな検査や治療は行われないので、紹介状(診療情報提供書)と検査データを主治医から借りて提出することになります。保険がきかず、全額自己負担。費用は3万~5万で相談時間は30分から60分となります。

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親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…

親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…

渋澤 和世

プレジデント社

高齢化が進む日本では現在、介護ストレスによる介護疲れが大きな問題だ。そこで本書では、仕事や育児との両立を前提に、「完璧な介護」ではなく「頑張りすぎない介護」を提案する。 正社員としてフルタイムで働きながら、10年…

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