ある日突然、老親が緊急搬送で入院という事態が起こります。介護は毎日のことなので、使命感だけでは長続きはしません。10年以上、仕事をしながら父母の遠距離介護を続けてきた在宅介護のエキスパートは、「介護する人が幸せでなければ、介護される人も幸せにはならない」と訴えます。入院や介護に備え、知っておきたい制度やお金の話から、役立つ情報、具体的なケア方法までを明らかにします。本連載は渋澤和世著『親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…』(プレジデント社)から抜粋し、再編集したものです。

まず、かかりつけ医を受診し、相談を

エピソード

 

わが家では、幸いにして緊急性を要する症状がなかったので、すべて家族で対応しました (自家用車や徒歩、車いす利用。場合によりタクシー)。

 

渋澤和世著『親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…』(プレジデント社)
渋澤和世著『親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…』(プレジデント社)

(1)診療時間内:かかりつけ医を受診。必要に応じ紹介で総合病院を受診し、入院のルート。診察時間内であれば、まずはかかりつけ医を基本とした。

(2)診療時間外:優先はかかりつけ医に電話連絡。症状を説明し当直に診断できる医師がいないといわれた場合は、救急医療情報センターに電話し症状を伝えた。

 

母が年末に大腿骨頸部骨折をしたとき、1回目の受診時、レントゲン結果で判断ができずそのままお正月を越しました。「折れていないから動くように」と指導され、支え歩きをしていたのですが痛がるため正月あけに再受診。そこで骨折と診断され即入院で手術となりました。

 

高齢者は転倒直後だと判断が難しい場合があるとのこと。1回受診後も痛がったら再受診をしてほしいと思います。その後、再度転倒し、口腔内や手足から出血したときは自宅で処置ができず、救急医療情報センターに電話をして、すぐレントゲンや外科処置のできる病院を教えてもらい駆けつけたこともあります。

 

転倒に敏感な理由は、大腿骨頸部骨折の際、骨を器具で固定し折れた部分をつける骨接合術という方法で手術をしているからです。この部分にズレなど影響があると再手術になるかもしれないからです。

高齢者は症状を医師に伝えるのが苦手

父が前立腺肥大で入院したときは、静岡の総合病院を数か所回りましたが病名が特定できず、異常なしで帰されました。見るからにつらそうで体力も低下していたため、そのまま自家用車で川崎に連れてきて病院を受診しました。内科で前立腺肥大であると診断されました。

 

ここは総合病院ではないため泌尿器科は週1回、医師が大学病院から来院するのですが、常駐の内科医を主治医として入院させてもらうことができました。尿が出にくいことを父が静岡の病院に伝えていたら、もっと早く処置できたと思うのです。高齢者は症状を医師に伝えるのが苦手になるようです。腎機能障害を発症する寸前だったと後から聞きました。

 

かかりつけ医の話になりますが、静岡のときは、家から徒歩1分の診療所でした。この診療所は先代の頃から家族でお世話になっていたところで、両親ふたり暮らしのときは異常があったら私に電話をしてくれて、とても心強い存在でした。専門医を紹介されるときも、今回はこの症状だからA病院、今回は外科だからB病院などと説明をしてくれたため安心でした。

 

現在、私が住んでいる川崎に来てからは、父の前立腺肥大で絶大な信頼を寄せた、自宅から徒歩5分の中核病院。遠方までいかなくても、自宅に近く入院設備があり、内科、外科(脳外科もあるとなお良い)、整形外科があるところが、かかりつけ医として最適です。高齢者は何かとこれらの科にかかることが多いので一度に受診できて家族も効率が良く、夜間や休日も電話で医師の状況を確認した上で時間外外来で診察が可能になるなど、融通も利きやすいと思います。

 

 

渋澤 和世
在宅介護エキスパート協会 代表

 

 

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親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…

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渋澤 和世

プレジデント社

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