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簡単ストレス消去法は焼き鳥でビール
そんな時頼りになるのが娘。「ね～ね～じーじがさあ」と愚痴を思いっきり話すと気分が少しは楽になる。ただ、愚痴の内容によっては「それはママも悪いよ」とたしなめられることもあり、奈落の底に突き落とされた気分になる。そこは、親子といえども注意をしなければならないのだ。しかし、すぐそばに聞いてくれる人がいるのはありがたいことだと感謝している。
また、定期的にショートステイも利用している。通常は、父がデイサービスから帰ってくる時間に合わせて仕事をやりくりしているので、時間を気にしながらの毎日だが、ショートステイの日は、時間を気にせず過ごせるので気持ちがとっても楽である。おまけに、夜も安心して眠れるし、居酒屋で大酒をくらえる！
最近編み出した、簡単ストレス解消法は、駅前にある大好きな焼き鳥屋さんで焼き鳥を購入し、これまた大好きなスーパードライ（普段は発泡酒）を購入し、「♪く～そじじい（焼き鳥パクっ）、くそじじい（ビールごっくん）」と、桃太郎のメロディーに合わせて大声で歌いながら家飲みをすること。
じーじの安定剤もビールだが、私の安定剤もビール。血は争えないと実感するのである。
認知星人に変身するのには、立派な理由がある
認知症の人が徘徊するのには理由があるように、父が認知星人に変身するのは、ちゃんとした理由がある。
昼夜逆転（日中は寝ていて、夜に起きている生活）が続いていたある日、深夜にお出かけをしようとしていたことがある。真夜中だというのに、背広に着替え、手には紙袋を持っている。どこに行くのかと思えば「皇室会議に参加する」と言うではないか。しばらく夜な夜な皇室会議に参加するという行動が続いたのだが、ある一言がきっかけで、ピタッとその行動はなくなった。
何かのテレビ番組を見ていた時に「浩宮様は、いくつだ？」と聞くので、「私と同じ年だよ」と言うと、「そうか、お前と同じ年か。そんないい歳になっていたのか。これで日本の未来は安泰だ」。どうやら、浩宮様がもっと若いと思いこんでいて、じーじなりに、先の天皇陛下退位後の日本を心配していたらしいのである。
家を売ったから〇建設の営業マンを呼べと言ったことや、新築の分譲住宅を買ったと言ったのは、自分が天国に行った後、築40年の家に住み続けるであろう私と孫のこれからを心配しているからのようだ。
「株～、株～」と言うのも、私と弟と孫に大金を遺してやりたいからのようだ。
じーじが心配している相手は、還暦の娘と還暦に手が届きそうな息子とアラサーの孫である。心配ご無用、じーじのほうがよっぽど心配ですよ。と言いたいところだが、親はいくつになってもありがたい存在なのである。
最近は、じーじの話の中から、次にどんな攻撃を仕かけてくるかが何となく予想できるようになった。予想がつくと、地球防衛軍としては先手を打つことができるから、わが家の平和な時間が保たれる。わが家が平和だと、じーじの症状も落ち着き、症状の進行も緩やかになるという方程式が出来上がる。われながら進歩したものだが、まだまだ修業中。認知星人の奇襲攻撃にはまだ勝てない。
黒川 玲子
医療福祉接遇インストラクター
東京都福祉サービス評価推進機構評価者
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